田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
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(イラスト/ウノ・カマキリ)
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 役員報酬をめぐる有価証券報告書の過少記載事件で逮捕された、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長。ジャーナリストの田原総一朗氏は、逮捕のタイミングに疑念を抱く。

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 日産自動車の代表取締役会長カルロス・ゴーンが、11月19日に東京地検特捜部に逮捕された。

 ゴーンは、ケリー代表取締役と共謀して、2010~14年度の5年度分の有価証券報告書に、実際は計99億9800万円の報酬があったにもかかわらず、49億8700万円と過少に記載していた疑いがある、というのである。虚偽記載のほかにも、日産の投資資金や経費を私的に流用していた、という不正もあるようだ。

 この事件は、私にとって大きな衝撃だった。実は、私はゴーンに2度インタビューしたことがある。経営者として相当評価していたのだ。

 1度目は1999年、ゴーンが日産のCOOとなって3カ月目であった。当時、日産は深刻な経営危機に陥っていた。ゴーンに、なぜ日産は経営危機に陥ったのか、と問うた。

“日産の幹部たちに、なぜ経営状態が悪いのか、と聞いたのです”

 ゴーンは英語で答え、通訳に入ってもらっていた。

“すると幹部たちは、市況が悪いからだ、と答えました。そこで、市況が悪いのならば、なぜトヨタやホンダは経営状態がよいのか、と問いました。そしたら答えはなかった。そこで、この幹部たちが日産の経営を悪化させているのだ、と判断しないわけにはいかなかった。彼らを変えなきゃダメなんだ、と”

 ゴーンは、はっきりと言い切った。私は、経営者としての“決意”を強く感じた。さらに彼は話した。

“日産という会社は縦割りで、透明度が極めて低く、閉鎖的でしてね。たとえば経営者が、もっと自動車を売れ、とハッパをかける。すると販売担当部は、値段を下げて売る。つまりダンピングをするわけです。そして、その実態が経営者にはわかっていない。縦割りで透明度が低いからです。そして、部品などの機材を購入する部門は、トヨタやホンダなどより2割も高く購入していて、しかもリベートを取っている。これでは経営が悪化するのは当たり前です。しかも、社員たちのほとんどはその実態を知らず、だから危機意識を持っていない。できるだけ早く、オープンで全社員が情報を共有できる会社にしなければなりません”

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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