ゴーンは強い語調で言い切った。

 そして、五つの工場を閉鎖し、2万人をリストラして、短期間で見事に日産をV字回復させた。

 2度目のインタビューは、このV字回復後であったが、ゴーンは当然ながら自信満々で、トヨタを抜くのが目標だと語った。目標はともかく、ゴーンのその後の活躍には期待した。

 それだけに、今回の事件は衝撃、というよりも残念至極だった。なぜ、ゴーンはこのようなつまらないことをしたのか。私には理解できない。

 今回の事件は日産がゴーンの不正を把握して東京地検に訴えたのだとされている。だが、ゴーンの不正は幹部役員ならば以前からつかめていただろうに、なぜ最近になって地検に訴えたのか。複数の新聞は、会社に刑事責任が及ばないように司法取引したのではないかと報じている。ところが、フィナンシャル・タイムズが、ゴーンがルノーと日産の統合を図ろうとして、これに反対の日産幹部がゴーン排除のために地検に訴えたのだと報じた。実はこの計画はマクロン仏大統領の意向でもあったということで、それをひっくり返すことは、とても東京地検にはできない。ということは、政府絡みの事件ということになるのではないか。

週刊朝日  2018年12月7日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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