北京モーターショーで発表されたレクサスの新型セダン (c)朝日新聞社
北京モーターショーで発表されたレクサスの新型セダン (c)朝日新聞社
中国での自動車販売(週刊朝日2018年11月23日号から)
中国での自動車販売(週刊朝日2018年11月23日号から)

 世界経済を不透明にする米中貿易戦争。その狭間で、トヨタが苦悩している。日本企業の代表格としてトランプ大統領からゆさぶられ、中国での事業拡大も一筋縄でいかない。下院で共和党が負けた中間選挙後も、トランプ氏は強気姿勢。最強企業を覆う霧は晴れない。ジャーナリストの井上久男氏がレポートする。

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 トヨタ自動車が11月6日に発表した2018年4~9月期連結決算は、純利益が前年同期比16%増の1兆2423億円となり、中間期で過去2番目の水準となった。売上高は3.4%増で過去最高の14兆6740億円、本業のもうけを示す営業利益は15.1%増の1兆2618億円。アジアでの販売増やお家芸の原価低減が利益を押し上げた。

 記者会見したトヨタの小林耕士副社長は「地域別にみると課題もあるが、過去最高益に近づいたので、(収益状況は)三角からマルになった」と業績を評した。

 小林氏が指摘する地域別の課題でトヨタの頭を悩ますのが、かつての「ドル箱」北米事業。北米地区の営業利益は3%減の1372億円で、この3年間で半減した。販売台数は微増の141万台だが利益が落ちたのは、実質的な値引き販売の原資となる販売奨励金(インセンティブ)が増えているからだ。

 北米の販売構造は大きく変化している。「ライトトラック」と呼ばれる大型ピックアップトラックや大型SUVが全体需要に占める比率は、70%近くまで上昇。トヨタが得意とするセダン系の「カムリ」「カローラ」で以前ほど稼げなくなった。

 さらに、北米事業でのリスクが高まりつつあり、今後は収益環境の悪化が見込まれる。リスクとは、ずばり「トランプリスク」だ。自国最優先、言い方を変えれば自国の都合でグローバル経済のこれまでのルールを書き換えるような経済政策が、自動車ビジネスにも影を落とそうとしている。

 まずは、9月末に合意した新NAFTA(北米自由貿易協定)とも呼ばれる「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」が発効すれば、現地の部品調達費比率を現行の62.5%から75%にまで引き上げなければならない。トヨタを含め、日本の自動車メーカーはサプライチェーンを再構築する必要があり、大幅なコスト増となる。

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