奇跡の復活! スティーヴ・ペリーの新作ソロの“泣きどころ” (3/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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奇跡の復活! スティーヴ・ペリーの新作ソロの“泣きどころ”

連載「知新音故」

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小倉エージ週刊朝日#小倉エージ
自分自身がシンガーとして再生する道のりを作品にしたスティーヴ・ペリー(c)Myriam Santos

自分自身がシンガーとして再生する道のりを作品にしたスティーヴ・ペリー(c)Myriam Santos

ニール・ショーンらに請われて加入したジャーニー時代にヴォーカリストとしての地歩を築いたスティーヴ・ペリー(c)Myriam Santos

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スティーヴ・ペリーの新作『トレイシズ』(ユニバーサル ミュージック UCCO―1201)は日米のチャートで上位に

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「ノー・モア・クライン」はダン・ウィルソンとの共作による3連のソウル・ロック・バラード。スティーヴはソウルフルな熱唱を披露。スティーヴの引きこもりや過去のことが織り込まれている。「イン・ザ・レイン」はピアノとストリングスをバックに歌われるバラード。いなくなった恋人への思いを込めた曲で、スティーヴが切々と歌いあげている。

「サン・シャインズ・グレー」はAORのテイストも織り交ぜたハードロック・ナンバー。歌いぶりもワイルドでエネルギッシュだ。

 「ユー・ビロング・トゥ・ミー」は再びピアノとストリングスをバックにしたバラード。“僕たちは生きながらえるために戦った”という一節が、がんと向き合っていたケリーへの思いを込めた歌であることを物語る。「イージー・トゥ・ラヴ」はソウル・テイストを採り入れた洗練されたポップ・ロック。シンプルなラヴ・ソングで、スティーヴの歌いぶりも軽妙だ。

「アイ・ニード・ユー」はジョージ・ハリスンの曲。意表をつくスローなロック仕立て。シンセのフレーズがラガ風だ。熱のこもった歌いぶりも出色。これもハイライト曲に挙げられる。

 ラスト・ナンバーはシンプルな演奏、サウンドによるバラード「ウィ・フライ」。“君こそが理由だった 僕たちの季節だった”と歌われるラヴ・ソングで、ケリーと過ごした日々の思い出が歌い込まれている。

 日本盤ボーナス・トラック2曲のうち、「コール・オン・ミー」はスティーヴが単独で作詞、作曲している。ケリーへの思いをきっかけに生まれた歌のようだ。「オクトーバー・イン・ニューヨーク」は、ゴージャスなアレンジによるストリングスを用いたスタンダード風。曲調もさることながら、スティーヴのじっくりとした歌への取り組みはこれまでになかったもの。ヴォーカリストとしての幅を見せた異色の曲だ。

 亡きケリーがスティーヴに願った言葉をきっかけに、傑作が生まれた。ロック・ヴォーカリストとして高く評価されてきた彼が、多彩なサウンドをバックに、意欲的な姿勢を見せた力作でもある。

 本人は“音楽に対して完全に素直な気持ちが持てていなかったら、戻ってこなかっただろう”“今はとにかく、自分にとって本当に大切な音楽を作って、それが他の人にとっても本当に大切な意味を持てばいいなと思っている”と語っている。(音楽評論家・小倉エージ)


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小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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