その言葉がずっと頭の中に残り“僕の音楽への愛情は徐々に戻ってきた”という。

 ケリーが遺した言葉が復活のきっかけとなり、14年ごろからイールズのライヴにゲスト参加するようになった。翌年には新作の発表を予告。すぐには実現せず、ようやくこの10月に本アルバムが発表されたのだった。

 アルバムは、エンジニアでギタリストでもあるトム・フラワーズとの共同制作。ドラムスのヴィニー・カリウタ、オルガンのブッカー・T・ジョーンズ、ベースのネイザン・イーストやピノ・パラディーノらを迎えて録音した。ストリングスを起用し、サウンド展開に幅をもたせたのも本作の特徴として挙げられる。トムらとの共作が中心だが、カヴァー曲としてビートルズ、それもジョージ・ハリスンの曲を採り上げている。

 アルバムの幕開けはシングルとなった「ノー・イレイシン」。ストレートなハードロック・ナンバーで、パワフルかつソウルフルなヴォーカルを聴かせている。かつてスティーヴが育ち、通った学校の同窓会での懐かしい人々との再会や語らいをきっかけに書いた曲で“僕が長年会っていなかった観客との再会”という思いも込めたという。

「ウィアー・スティル・ヒア」は、ギターでも参加しているブライアン・ウェストとの共作曲。ミディアム・テンポで、スティーヴがデヴィッド・キャンベルとともにアレンジしたストリングスが使われている。スティーヴの伸びやかな歌声が印象深い。かつて“自分の街”だったというハリウッド。今はそこに我が物顔でいる新しい世代との結びつきやつながりを感じたことから生まれた曲だという。

「モスト・オブ・オール」は本作でのハイライトのひとつ。かつて「Oh、シェリー」を共作し、本作にピアノでも参加しているランディ・グッドラムとの曲だ。70年代のAOR的なテイストを持つ。本当に愛した人、大切な人を失ってしまったことを歌った曲だと語る。亡きケリーと出会う前にこの曲を書いていたものの、その内容から彼女には聴かせなかったそうだ。ケリーへの思いが浮かび上がる。

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