渡辺医師が、秋バテは冷房の影響が大きいと特に感じたのは、11年。「震災の影響で節電の夏でした。みんな冷房の設定温度を上げていた影響か、秋バテにかかる人は少なかった。酷暑の年は冷房への依存が強いし、室内外の温度差が大きいので、夏が暑いほど秋バテの傾向は大きいと思います」

 もう一つの要因は、冷たい物の取りすぎ。真夏に人々が口にするのは、ジュースをはじめ暑気払いのビール、アイスクリームやかき氷などの氷菓……。これらを摂取しすぎて内臓が冷え、体調不良につながる。

 では、秋バテのサインが出たら、どう対処すればいいのだろう。

 まずは入浴だ。ストレスがかかることで、自律神経のうちの交感神経が高ぶってしまう。この交感神経を抑えて体をリラックスさせ、温熱作用も得られる入浴法を、東京都市大学人間科学部教授で温泉療法専門医の早坂信哉氏に聞いた。

「38~40度のぬるめのお湯に、延べ10~15分ぐらい入りましょう。やや高めの42度以上になると、逆に交感神経を刺激してさらに疲れてしまいます」

 理想的なのは眠りにつく1時間半前に風呂から上がること。入浴で1度上昇した体温は約1時間半後に下がり始めるためだ。これが眠気が出てくるタイミングで、良質な睡眠をもたらしてくれるそうだ。

 風呂上がりといえば、腰に手を当て、瓶の牛乳を勢いよくグビグビと飲み干す姿をつい思い起こしてしまうが、「入浴後の水分補給はよいのですが、冷たすぎるものは避け、冷房にあたって急激に体を冷やすのもやめましょう」と早坂教授。

 また、入浴すると血流が良くなり、胃腸や筋肉に流れるべき血液が皮膚寄りに流れる。

 だから、入浴前後30分~1時間は食事をとらないほうがよい。血液が胃腸に集まる食事の直前と直後に入浴すると、消化不良を引き起こすそうだ。

 運動後に入る場合も30分は空けるようにしよう。血液が乳酸などの疲労物質がたまった筋肉に流れないことで、疲労回復が進まない恐れがある。

次のページ