湯船につかるのが苦手な人は、足湯や腕などの部分浴でも体温は上がる。部分浴に小さめのユニットバスなどを利用する場合は、湯が冷めやすいので、湯温を42~43度とやや高めに設定してもいい。

 次は食事だ。

 渡辺医師は「代謝を上げて体温を上げるには、たんぱく質の摂取が有効です。特に朝食でとることで、消化・吸収の過程で熱をたくさん生み出します。半熟卵や納豆などは消化もいいですね。また、弱った胃腸を助けるために薬味類も有効です。ショウガは漢方薬の約半数に入っていて、胃腸の機能を高めて吸収をよくする『健胃生薬』でもあります。ネギや大葉も香りによる食欲増進効果があるので、料理にちょっと加えるだけでもいいですよ」とアドバイスする。

 これを元に、フードコーディネーターの清水加奈子さんに、最強秋バテ対策メニューを作ってもらった。

「薬味たっぷりシュウマイ」は、刻んだ長ネギと大葉、おろしショウガをたねに混ぜ込み、皮で包んだら蒸し器で4~5分蒸す。弁当のおかずにもぴったりだ。「鶏胸肉と卵のお粥」は、電子レンジで加熱した鶏胸肉をほぐし、ごはんと共に小鍋で煮る。火を止めてから溶き卵を加えて軽くかき混ぜる。鶏胸肉の良質なたんぱく質が、弱った体を元気づけてくれる。

 清水さんが付け加える秋バテ対策の食事のポイントは二つ。一つは、体を冷やさないように「蒸す」「煮る」などの加熱調理法を選ぶこと。成分を生かせるように、薬味の調理時間は短めに。最後に加えてもよい。もう一つは、「ごはん(主食)×薬味×豆類」の組み合わせを意識すること。ごはんの糖質を効率よくエネルギーに変え、薬味のアリシンで豆類のビタミンB1を継続的に働かせて、疲れにくい体を取り戻そう。

 入浴や食事で秋バテ対策ができても「いやいや、まだ暑いから冷房なしでは眠れない」なんて人もいるかもしれない。渡辺医師は、「設定温度を上げたり、ちょっとぜいたくですけど寝室の隣の部屋で冷房をつけて冷気が回るようにしたり。体に直接風を当てないことが大切です」と話す。

 有効な漢方薬もある。渡辺医師によると、夏バテにも効く「清暑益気湯(せいしょけっきとう)」を始め、胃腸の機能を補ってインフルエンザ予防効果も期待できる「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」、特に食欲不振に悩む場合は「六君子湯(りっくんしとう)」もお薦めのようだ。万全の対処法で残暑を抜け出し、穏やかに秋を迎えよう。(本誌・緒方麦)

週刊朝日  2018年9月28日号