しかし、安倍内閣では中選挙区制を経験した議員はほとんどいなくなり、ほとんどが安倍イエスマンになってしまった。これが大問題なのだ。

 だからこそ、安倍首相は、神経が緩んで、森友・加計事件などを起こしてしまったのである。

 森友問題で、安倍首相は国会で「もしも私や妻が、森友学園の認可や土地売却などに関わっていたら、首相も議員も辞める」と表明し、そこで財務省は慌てて決裁文書を改ざんしたのであろう。しかも朝日新聞の報道がなければ、財務省は改ざんを隠蔽するつもりだったのである。こんなことは民主主義を標榜する国にあってはならないことだ。

 それを最高責任者である財務大臣は、「なぜ改ざんしたのか、わかれば苦労しない。わからないから苦労しているのだ」などと言い、「こんなのは個人的な行為で、財務省には責任がない」とも言っている。かつての自民党ならば、当然辞任せよとの声が強まるはずだが、そういう声がまるで出てこない。

 また、安倍首相は憲法を改正すると強調している。だが、9条の1項、2項には手をつけず、自衛隊を明記するのだという。これでは明らかに矛盾で、自民党のほとんどの議員は矛盾だと捉えているはずである。だが、そういう声は生じなくて、論議も起きない。

 私は、これは自民党の劣化だと捉えているのだが。

週刊朝日  2018年9月7日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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