20代の男性会社員もやはり、ペニスにできた小さな潰瘍が気になり同クリニックを受診した。HIV陽性者でもあり、海外での男性同士の性的な接触で梅毒にも感染してしまった。20代の美容師の女性は、潰瘍などから梅毒がわかったほか、性器ヘルペスの混合感染も確認された。どちらのケースも抗菌薬の服用で2週間後には潰瘍はほとんど消失し、4週間で梅毒の治療を終えた。これらのHIVや性器ヘルペスのように、ほかの性感染症の疑いがある場合、鑑別のためには問診が重要である。

「問診では、感染の疑いがある性的な接触が『いつだったのか』、それは『どこだったのか』、相手は『誰だったのか』『どのような性的な接触をしたのか』『今の自覚症状は』などをうかがいます。性感染症ごとに感染から症状が出るまでの期間が異なるため、こうした問診で、症状ごとに原因になっている感染症を探っていくのです」(尾上医師)

 そして尾上医師は、梅毒をはじめ、性感染症予防のポイントとして次の五つを挙げる。

●尾上医師による性感染症予防の五つのポイント
(1)不特定多数の人とセックスをしない
 相手の人数が多いほど、感染の危険性が高まるのは明らか
(2)コンドームは最初から最後まできちんと使う
 「コンドームなしでもこれくらいはいいだろう」が感染のもとに
(3)オーラルセックスも安全ではない
 梅毒の原因菌は、ペニスだけでなく口の中で見つかった人も多いという研究もある
(4)この人は大丈夫と思い込まない
 決まった相手以外はとくに、このような思い込みは通用しない
(5)疑われる行為があれば時期をみて検査を受ける
 梅毒なら「疑われる行為」から約3(~6)週間後の検査が目安。検査を受け、きちんと治療することが感染拡大の予防につながる

「若さ」や「暑さ」による一時的な“勢い”で梅毒などの性感染症を招き入れないように、五つのポイントをしっかり守りたいものである。

(文/近藤昭彦)