問診で、症状ごとに原因になっている感染症を探っていく(※写真はイメージ)
問診で、症状ごとに原因になっている感染症を探っていく(※写真はイメージ)

 一時は「過去の病気」とさえいわれた性感染症の梅毒。そのため、梅毒を診たことがない医師も珍しくなくなってしまったという。それが一転して、梅毒の年間報告数は急増を続け、しかも若い女性に増えてきた。性感染症の専門医に取材し、若い女性の梅毒の発見、受診、治療といった事例、さらには予防のためのポイントを紹介する。

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 風俗店で働く20代の女性は性器の違和感や排尿痛を訴え、プライベートケアクリニック東京を受診した。対応した院長の尾上泰彦医師は、視診で小陰唇両側に10ミリ大の硬いしこりがつぶれた潰瘍(かいよう)を確認した。血液検査でも梅毒陽性となり、梅毒と診断された。彼女は2年前にも梅毒にかかっており、再感染だった。

 梅毒はきちんと治療したとしても、感染の機会があれば何度でもかかる。抗菌薬をのみ始めて1週間後には潰瘍は縮小し、4週間で血液検査も正常になり治療が終わった。

「梅毒の第1期に多い硬いしこりや、しこりがつぶれた潰瘍は早期発見のために重要な症状です。女性では小陰唇や大陰唇、男性ではペニスの亀頭下部の“溝”あたりに多くみられます。自分自身で、あるいはパートナーが気づいたら、素手では触れないようにして、すぐに性感染症の専門医を受診してください」(尾上医師)

 梅毒などの性感染症は風俗店で働く人に多い傾向があるが、男女間の性的接触で広がる場合、「一般の人」も例外ではない。30代後半の男性と30代前半の女性の新婚カップルは2人そろって同クリニックを受診した。

 同時期に外陰部に潰瘍ができたのに気づいたためである。血液検査などの結果、2人ともに梅毒と診断された。問診により、男性が婚約中に風俗店を利用して梅毒に感染し、婚約者にうつしてしまった、という感染経路がわかった。自分自身は風俗店とは無関係でも、こうして感染が拡大していく。2人は指示通りの服薬を続けて治療を終え、その後、夫婦2人の子どもが元気に生まれた。

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