【ミニちょうちん】ペナント、通行手形と並んで、昭和おみやげビッグ3の一角を占める存在。ちょうちんは日本の伝統工芸品でもあり、おみやげとの親和性もある。今では外国人に人気が高いアイテム【通行手形】将棋のコマのような五角形の木片に観光地名が書かれたもの。昭和47年ごろ、石川県の会社が考案したとされる。江戸時代の通行手形のイメージが旅を思い起こさせるのに最適で人気を博した
【ミニちょうちん】

ペナント、通行手形と並んで、昭和おみやげビッグ3の一角を占める存在。ちょうちんは日本の伝統工芸品でもあり、おみやげとの親和性もある。今では外国人に人気が高いアイテム

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【通行手形】

将棋のコマのような五角形の木片に観光地名が書かれたもの。昭和47年ごろ、石川県の会社が考案したとされる。江戸時代の通行手形のイメージが旅を思い起こさせるのに最適で人気を博した

 帰省や旅行で欠かせないのがおみやげ。では、おみやげを買う習慣はいつ、どのようにして生まれたのだろうか。そして、私たちは、おみやげをどこに連れていくのだろう。その歴史とともに考えてみる。

<おみやげの始まりと広がり>
平和が訪れた近世は、庶民の旅が成立した時代でもあった。単なる移動ではなく、旅を楽しむようになり、旅の実用書も出版された。そしてそこにおみやげが誕生した。

■旅行用心集
江戸時代に刊行された旅を楽しむためのガイドブック。「日記手帳」を必需品とし、書き方も解説するなど旅先での知恵が満載 八隅蘆庵(景山)1810年刊 国立歴史民俗博物館蔵

■山本店前図
江戸で人気を博した山本屋の店頭を描いた浮世絵。山本山は1690年に創業し、当初は紙を扱っていたが、後に茶も販売しはじめ、今も日本橋に店を構える 歌川国芳 1844~48年 国立歴史民俗博物館蔵

■参宮土産くは(配)りの図
大坂で出版された『進物便覧』には、京や大坂、江戸などのおみやげが紹介されている。また進物の心がけも記述され、おみやげを配る場面も描かれている 隴西大隠(田宮仲宣)『進物便覧』から 1811年お茶の水女子大学生活文化学講座蔵

「日本のおみやげは、欧米のスーベニアと異なり、自分のためだけでなく、他の人に贈るギフトなのです」

 そう話すのは、国立歴史民俗博物館で開催されている「ニッポンおみやげ博物誌」展を企画した同館の川村清志さん。

 社会が安定してきた近世、交通網が整備された。そのため、モノ、ヒト、情報が往来し、伊勢参り、野詣でなど寺社への参詣や、京、大坂、江戸といった都市への行き来も活発になった。人々は、それらの地で購入した文物や、見聞きしたコトを持ち帰るようになり、おみやげが成立したとされる。今につながる旅行や観光文化はこの時代に育まれたとのことだ。

「当初はおみやげといえば、現地で見聞きした話が中心でした。そのため、旅人は何を見て、何を食べ、そして何を買ったかなど、こまめに日記をつけていました。それを旅から帰ってみんなに披露していたのです」(川村さん)

 自慢げに話す旅人と、それを興味深く聞く人の輪が目に浮かんでくる。

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