帰省シーズンは、子や孫を迎えに来る高齢者で駅や空港は賑わう (c)朝日新聞社
帰省シーズンは、子や孫を迎えに来る高齢者で駅や空港は賑わう (c)朝日新聞社

 子や孫への金銭的な援助は行き過ぎると生活費が足りなくなり、「老後破産」を招きかねない。

 都市部を中心に多いのが、親のお金をあてに、自分の子どもを私立校に入れる例。ブランド意識も作用し、教育レベルの高い私立に入れたがる親は多い。だが一般的に、教育費は小学校から大学まで国公立で1千万円、小学校から私立に行けば2千万円にも膨れ上がると言われる。自力ではそこまでの経済力を持てないが、「教育は人生への投資。孫の将来のためにお願い」と、自分の親に教育費の負担を求める例が少なくないという。

「親も、孫が小さいうちは“援助するから私立に入れれば?”と安請け合いしてしまっても、いざ年金生活を目前にすれば、そこまで援助できない場合も多い。私立入学を決めた後に、具体的なお金の話でもめる親子の例は結構多いですよ」

 そう話すのは、老後資金に関するアドバイス実績も豊富なファイナンシャルプランナー、畠中雅子さんだ。

 田舎では、昔ながらの慣習に縛られ、「子どもの結婚資金は一律500万円出すのが習わしだから」と、無理して慣習に従おうとする例も珍しくないという。

「慣習とはいえ、お隣が500万円出しても、同額出さなければいけない理由は何もないはずです」(畠中さん)

 内閣府の「高齢者の経済・生活環境に関する調査」(16年)によれば、学生を除く18歳以上の子や孫がいる人のうち、20.8%が生活費を出していると回答。しかも、その子や孫の約8割は、仕事についており、半数は正社員だ。結婚した子どもの保険料や孫のスマホ代を払い続けている親もいる。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、こう分析する。

「今は、子どもや孫世代の賃金が上がらず、親世代と比べて稼げていません。さらに晩婚化・未婚化によって、独身のまま親と同居する例も珍しくない。こうしたことが背景となり、高齢の親が子どもに援助する例が多いのでは」

 いい大人がいつまでも親の援助をあてにする。それは、子どもの自立心のなさもさることながら、一番の原因は親の認識の甘さだという。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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