振り返ると、私も日々の生活で『サービスの押し付け』をしてることが多いです。

 朝、「洗濯しといたよー!」と、これみよがしに家内に告げると「ちょっと! あれはまだ浸けおきしたばかりなのに、洗濯機を回すの早すぎる!」と注意され、不機嫌になる私。仕事がたまたま無い日に「今日はお父さんがカレーでも作ろうか!」と腕まくりすると、「あー、今日は餃子にしようと思ってタネ作っておいたのに!」と言われ、「じゃぁいいよ! もう作らんっ!(怒)」とぶんむくれる私。家庭内で、居場所を作ろうと余計な『サービス』を試みて、いっそう自分の居場所がなくなっている最悪のパターンです。

『サービス』はされる身になってしないと。されるほうも、する人の気持ちになって受けとめないと。『サービス』されるのもするのも、匙(さじ)加減が難しく、そしてその匙がけっこう重たい。

週刊朝日  2018年8月17-24日合併号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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