では「現・大阪駅師匠はどうする?」という話だが……。でもみんな師匠のことは『梅田』って呼んでるらしいじゃないですか。同じ場所にあるのに多数派の私鉄各駅は『梅田駅』。JRのみ『大阪駅』。そもそもそれが間違いの始まりのような気がする。最初から大阪駅師匠が梅田駅勢力をちゃんと取り込んで、『一大・大阪駅一門』を形成しておけば『大阪駅』の名はもっと東にも鳴り響いたのではないか。なまじ『梅田』なんて呼ばせるからこんなことに……。

 だから新大阪の二代目襲名に際し、大阪駅師匠はもう『JR梅田駅』に改名しましょう。『梅田』のほうが通りがよいのだから。もしくは『梅田横駅』『梅田そば駅』『梅田駅前駅』。なんなら「六十の本卦帰り」で、自分が『新』を付ける。前座に戻った心持ちで心機一転『新梅田駅』になるのはいかがでしょう。まぁ、まだ新大阪駅当人の意見は聞いてないのでなんとも言えないけど、襲名・改名というものは周りが言いださないとなかなか進まないのでちょっと提案してみました。名前について悩んでいる各地の駅たちも、良かったら私に相談してほしい。

『新横浜』『新神戸』に『新御徒町』『新木場』『新江古田』『新松戸』『新高円寺』……みんなけっこう頑張ってるんだから、そろそろ『新』、とっちゃいますか。それとは別に『下丸子』と『新丸子』はホント紛らわしいから、どっちか変えてくれ。

週刊朝日 2018年8月10日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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