春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です
上に『新』の付く単語は若々しく生まれたばかりのイメージだが、新大阪駅はというと…(※写真はイメージ)
上に『新』の付く単語は若々しく生まれたばかりのイメージだが、新大阪駅はというと…(※写真はイメージ)

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「新○○」。

*  *  *

 上に『新』の付く単語は若々しく生まれたばかりのイメージだ。『新人』『新婚』『新刊』『新生活』……。また、既存のなにかがあって、新しく同様の名前をつけた団体・建物・駅なども『新○○』だったりする。

 ただ『新○○』も時が経てば、そんなに『新』じゃなくなってくる。「相対的に見れば……まぁ、確かに『新』だけど……だいぶトウが立っちゃったな……『新○○』と呼ばれる当人も辛かろう……」と、周りに余計な気を使われだしたりして。

 物心ついたとき、すでに『新○○』があった世代には、「なにが『新』だよ! いつまで『新』なんか付けてんだよ。あんたが若手のままだと、下が育たないんだよ!」と、自分の意思で名乗ってるわけじゃないのに、いわれの無い陰口をたたかれたりして。

 すでに『新』ではない『新○○』が、いつまでも『新○○』のままなのは可哀想な気がする。そろそろ『新』から解放してあげてもよいのではないか。

 たとえば新大阪駅。1964年にデビューして駅歴(?)54年。54歳といえば、働き盛りをちょっと越えたかな……いや、でもまだまだやる気みなぎり、今の駅界を背負って立つ世代だ。ただ大阪駅よりははるかに若い。1874年入門の長老・大阪駅師匠にしてみれば孫同様だ。「ワシの目の黒いうちはお前はまだまだ『新』でいろ」てなもんだ。正直、こういう先輩はホント困るなぁ。

 我々、関東の人間からすれば新大阪駅は、大阪駅師匠よりはるかに知名度がある。申し訳ないけど、私はこないだまで「え? 大阪駅ってあるの? 大阪駅が新しくなって新大阪になったんじゃないの?」と思っていた。新大阪駅は新幹線を抱えて54年。もう明らかに『新』じゃない。派手に襲名披露して『二代目 大阪駅』を名乗ったらどうだろう?

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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