岡田作の「午後の窓」は、60年代のフォーク・ロック・テイストのポップな曲。カスタネットの響きなどスペクター風でもある。笹倉がファルセットによる歌を聞かせている。

 谷口作の「アフター・ザ・ガール」は「マイ・スウィート・ロード」風のリフ、12弦ギターの響きが懐かしいポップ・ソングだ。

「抱きしめたい」と「風にあわせて」は本作でのハイライト。前者は3度目の録音で、丹念な歌唱と緻密なアンサンブル、後者では岡田ならではのサイケなギターがもたらすスリリングな演奏が聴き所だ。

「恋の汽車ポッポ」は大瀧詠一のカヴァー。ジェームスがチャック・ベリーの曲をカヴァーしていたことにヒントを得たとか。横揺れのグルーヴ感が絶妙だ。

「過ぎたことのように」での笹倉のギターと谷口のエレピのコンビ、「湖畔の人」での“あなた”との心の隔たりを表現した岡田のギターも光っている。

「南の窓から」では、変わりゆく季節への戸惑いと“君”への思いを、綿密に構成されたアンサンブルで巧みに表現している。

 目の当たりにした情景、移り変わる季節を背景に、心のよりどころをもとめて歌う穏やかで端正な笹倉の歌声とギター。それに寄り添うバンドのアンサンブルに心がなごむ。パーマネントなバンド活動にも意欲的だと言う彼らの今後に注目したい。(音楽評論家・小倉エージ)

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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