心房細動を放置すると「心原性脳塞栓症」という脳梗塞のリスクが非常に高くなる(※写真はイメージ)
心房細動を放置すると「心原性脳塞栓症」という脳梗塞のリスクが非常に高くなる(※写真はイメージ)

 不整脈の一つ、心房細動の推定患者数は100万人を超す。良性の不整脈だが、脳梗塞を引き起こすため、早期の治療が必要だ。服薬管理しやすい抗凝固薬の登場で、かかりつけ医での薬物療法が可能になった。

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 健康な成人の場合、心拍は1分間に50~100回、規則正しく刻まれている。運動時や飲酒時、緊張感・不安を感じたときなどに心拍が速くなるのは自然なことだが、からだになんらかの異常があってこのリズムが乱れて脈が速くなったり(頻脈)、遅くなったり(徐脈)、脈が飛んで間隔が均等でなくなったりする(期外収縮)のが不整脈だ。

 多くは加齢や体質、過労、ストレスなどが原因になるが、心臓の異常や高血圧、肺や甲状腺の病気から起こることもある。心臓が原因の不整脈としてもっとも患者数が多いのが心房細動だ。ここでは心房細動を中心に述べることにする。

 心房細動はおもに左心房の心筋(心臓の筋肉)が、異常に興奮してぶるぶる震えた状態になる。そのため、1分間に100~150回程度の頻脈になってしまう。

 もっとも大きな原因は加齢で、心臓の組織が老化現象で徐々に線維化(組織が変性して硬くなってくること)することがあげられる。60代以降で患者数が増えてくるのはそのためだ。そのほか、心筋梗塞などの心血管障害や貧血、脱水、ストレスなども原因になる。

 自覚症状として、動悸、息切れ、めまいなどが起こるが、まったく症状のない「無症候性心房細動」も少なくない。患者の3人に1人は無症候性といわれている。そのため、健康診断や人間ドックで偶然見つかるケースも多い。

 心房細動自体は良性の疾患で、突然死につながるような不整脈ではない。しかし心房細動には別な怖さがある。それは、放置すると「心原性脳塞栓症」という脳梗塞のリスクが非常に高くなることだ。

■脳梗塞のリスクを上げてしまう

 東邦大学医療センター大森病院循環器内科主任教授の池田隆徳医師は次のように話す。

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