よほどの対外要因でもない限り、超低金利が終わることもなさそうだ。メガバンクで投資用ローンを組むと、わずか「年0.8%」程度で済むという。ミニバブルは銀行の貸し渋りで地価下落が始まったが、

「銀行全体で見れば、まだまだ貸し続ける態勢にあると思います。メガバンクの融資目線は徐々に厳しくなってきていますが、それを補完するかのように、貸出先がないことで苦しむ地銀がメガ並みの金利で思い切り貸し込んでいます」(新井氏)

 こうしたことから不動産鑑定士の置鮎謙治氏は、現状の不動産市場には「勢い」があり、崩れそうもないと見る。

「低金利、インバウンド、オフィス。この三つの状況が変わらない限り、地価は上昇し続けるのではないでしょうか。さすがに上昇率がさらに上向く可能性は低いと思いますが、上昇率が大きく下がることもない。仮に年間5%程度上がっているとすると、ここ1~2年は同じような調子で上がっていく可能性が高いのでは、と思います」

 こうした見方がおそらく業界標準なのだろう。しかし、綻びも見え始めている。

 堅調なはずのオフィス需要だが、元証券マンで不動産鑑定士の新井隆之氏は首をかしげる。

「東京都区部のオフィス賃料が上がってこないのです。少しずつ回復してはいるのですが、ファンドバブルのピーク時の水準には遠く及んでいません」

 地価が上がっているのなら、真っ先に賃料を上げるのがオフィス商売の基本だろう。その動きが鈍いというのだ。

 不動産事情に詳しいオラガ総研の牧野知弘氏が手がかりを与えてくれる。史上空前の空室率の低さには、「からくり」があるのでは、というのだ。

「一つは、新規供給されるオフィスの7割が建て替え物件であることです。建て替えだから、元のビルにいたテナントは外に出て別のビルに入らなければなりません。一方、既存のビルは壊されるので、オフィスの供給面積は減ります。両方の効果で空室率は下がるわけです」

 さらに、今年から20年にかけて都心で大規模ビルの供給ラッシュが起きることが状況を複雑にしている。都心の好立地を背景に、ビルを供給するディベロッパーは立地に見合った賃料を想定している。しかし、坪3万円台後半~4万円にもなる賃料負担に耐えられる企業はそう多くはない。すると、既存の大型ビルのテナントを引き抜くしかなくなる。

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