高層オフィスビルが林立する東京都心部(c)朝日新聞社
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株価ボード。今後、株価と不動産価格の関連性はどうなるか?(c)朝日新聞社
株価ボード。今後、株価と不動産価格の関連性はどうなるか?(c)朝日新聞社

 値上がりを続けてきた地価が2019年1月から下落を始める――。そんな青山学院大学の榊原正幸教授による新説に専門家らも賛否両論。一方で、好調な不動産市場とは裏腹に、その綻びも現れ始めている。最新の不動産市場の動向を探った。

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 インバウンド(訪日外国人観光客)消費の活況で、ホテル・店舗需要は増える一方だ。今年の公示地価では、大阪で異変が起きた。「爆買いの聖地」と言われる「ミナミ」を抱える「心斎橋」が、ずっと首位だった「キタ」の「梅田」を抜いて大阪のトップに輝いたのだ。

 東京でも同じ傾向のようで、浅草を抱える城東地区に詳しい不動産業者がこう言う。

「観光地に近いところで30坪ほどの土地が売りに出ました。そこを種地にホテル用の物件をこしらえようとした業者が『買いたい』と言ってきたのですが、提示金額がすごかった。せいぜい坪250万~300万円のところに『坪1千万円、いや1500万円でもいい』、でした」

 オフィス需要も堅調が続いているとされる。東京の平均空室率は「2.6%」という史上空前の低さ。先の新井氏によると、数字的にはなお投資余地があるという。

 投資用不動産の採算は、賃料から得られる純利益率(「キャップレート」という)と借入金の利率の差で決まる。二つの差が大きいほど利益は大きくなる。

「ファンドバブルのピーク時は、この差が『1.5%』にまで下がったのですが、今回はまだ『2.5%』程度ある。借入金利はこれ以上下がらないが、純利益率はなお低くなってもかまわない、つまり一段の物件の値上がりにも対応できる余地があることになります。もっとも実際は、(投資終了を意味する売却という)『出口』まで考える投資家は、今は購入できないとする見方がもっぱらです。高値に買い向かっているのは、出口を考えなくてもいい海外の年金資金かも、などと言い合っています」(新井氏)

 東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員によると、こうした海外マネーの流入は都心のマンションにも及んでいるという。

「23区内の新築マンションの坪単価と賃料の関係、つまり『利回り』をウォッチしているのですが、ここ数年、千代田区、港区、渋谷区の3区の動きが異常値を示しています。ほかの区に比べて突出して分譲坪単価が高くなっているので、国内の投資家は“利回りが低くて手が出せない”と判断しています。おそらくアジアの富裕層のお金なのでしょう。シンガポールなどの不動産の利回りは東京よりずっと低いといいますから、なお流入は続くと見ています」

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