「メタボリックシンドロームになる人も多い。寝ていないと食欲を促進するグレリンというホルモンの分泌が増え、食欲にブレーキをかけるレプチンという物質の分泌が減る。食欲が高まり、肥満になるという研究報告もあるんです」
その負のスパイラルに陥ると、肥満が睡眠時無呼吸症候群を招き、睡眠の質を下げる。そうなると、高血圧や心臓病になりかねない。医師の診察を受け、毎晩、特殊なマスクを装着し、就寝中に呼吸が止まるのを防ぐ必要に迫られる。
そのほか、不眠症やうつ病になる可能性もある。
「睡眠時間の確保は、病気の予防と治療、健康保持のための必須事項だと考えてください」(井上教授)
長年ため込んできた睡眠負債を返済することはできるのか。
毎日長時間寝れば負債が減るというわけではなさそうだ。白川さんは、就寝時刻と起床時刻を記録する「睡眠日誌」を勧める。どれだけ寝たのかを記録し、自分の体調が良いと実感できる時間を把握する。その時間を毎日確保する努力をすれば、負債を無理なく返済できるそうだ。
白川さんが言う。
「睡眠日誌で、7時間前後眠れているかを確認します。途中で起きていないかもチェックしましょう。慣れてきたら『返済週間』を設けてください。『返済週間』はいつもより30分早く就寝し、いつもどおりの時刻に起床して、寝起きや日中の調子の具合を確かめてみましょう。そこからさらに30分早く寝る習慣をつければ、計1時間を返済できます」
布団に入っても寝付きの悪い人もいる。白川さんが提唱する「すみやかに寝るための10カ条」(下)を参考にしよう。
【すみやかに寝るための10カ条】
1、午前中に日の光を浴びよ
2、食事の時間は一定にせよ
3、運動は夕方に。散歩もよし
4、カフェインは寝る3時間前まで
5、酒は寝る3時間前まで
6、寝る2時間前より強い光を避けよ
7、風呂は寝る30分前に
8、寝室は18~26度に保つべし
9、布団でのスマホ・ゲームは御法度
10、寝なきゃとあせるべからず
※監修/白川修一郎・睡眠評価研究機構代表
(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日 2018年7月6日号より抜粋