「たとえ点数が低かったとしても決して悲観しないでくださいね。今日算出した点数が低いということは、あなたはこれから幸福度が上がる人だということなのです。これからもっと幸せになる“伸びしろ”があるのですよ」

 なるほど。そう考えれば気持ちはかなり前向きに。近年、年齢と幸せの関係の研究も進んでいる。アメリカのサイエンス誌「PNAS」の調べによると、一番幸福度が低いのは40~50代だが、定年後はアップを続けている。

「やはり仕事というストレスから解放されることが、大きいのかもしれませんね」

 そうか。年をとればとるほどに幸せになる可能性があるのであれば、その可能性は十二分に引き出したい。前野先生、そのためにはどうすればよいのですか?

「幸福学という学問的見地から言わせていただくならば、『幸せの四つの因子』を高めることです」

 四つの因子とは?

「『やってみよう!』因子(自己実現と成長の因子)、『ありがとう!』因子(つながりと感謝の因子)、『なんとかなる!』因子(前向きと楽観の因子)、『ありのままに!』因子(独立とあなたらしさの因子)の四つです。これは私と私の研究室の大学院生グループが、日本人を対象に行った調査結果をコンピューターにかけ、因子分析を行って求めたものです。この四つの因子が低いままの人が、“幸せになれない人”ということになりますね」

 では、各因子を高めるコツを教えてください。

「『やってみよう!』因子が低いということは、つまり夢や目標が自分で描けていないということです。自分の強みも見いだせていないから、自己肯定感も生まれず、不満が募ってしまうわけです。この状態を改善するには、『自分はこういうことをやっていきたい』というブレない目標を早めに立てることです。定年後は特にどう生きていくのか、やりたいことがいくつもあると目標が散漫になりがちです。一度、自分自身の未来のビジョンについて、きちんと棚卸しをしてみましょう。そして大きな夢が定まったら、実現可能な身近な目標も設定しましょう」

次のページ