新入社員の意識も変化している。就職氷河期のころは何社受けても落ちて、希望する企業や職種に就けない人が大多数だった。

 今は少子高齢化によってどこも人手不足。厚生労働省と文部科学省によると、今春卒業した大学生の就職率は4月1日時点で98%と、調査開始以来で過去最高となった。リクルートワークス研究所の調べでは、来春卒業予定の大学生・大学院生の大卒求人倍率は、1.88倍(前年比0.10ポイント増)で7年連続の上昇。売り手市場は今後も続くとみられる。

 別の人材コンサルタントは、今は企業のほうが立場が弱いという。

「企業はいかに人材を確保するか必死なので、学生に遠慮しています。説明会イベントに参加した人にクオカードやお菓子などの“お土産”をわたすところもある。仕事内容はどの企業でも大変な部分があるが、そんなことを正直に伝えると人材が集まらなくなる」

 学生側はスマホで就職に関する情報を共有している。面接担当者が「うちの仕事は大変だが、あなたはついてこられるのか」などと聞くと、学生みんなから敬遠されかねないのだ。

 入社してからも情報収集には余念がない。どの企業も「コンプライアンス」や「ワーク・ライフ・バランス」に力を入れている。社内規則や相談窓口を調べ、上司や先輩から怒られると「パワハラをされた」などとすぐに申告するケースがある。休暇や留学制度などについて、早く利用したいと訴える人も珍しくない。

「有給休暇は法律で認められた権利なので消化します」

 こう宣言され、戸惑う上司・先輩はたくさんいる。以前は、新人はつらいことがあっても我慢すべきだとされてきた。仕事を覚えるのが第一で、「有給休暇なんて一人前になってからだ」などと、理不尽なことをかつて言われた人もいる。

「今はどうしようと思ったときに、すぐにネットで調べられる。手軽に解決できてしまうので、我慢する必要がない。その分、忍耐力や考える力が育ちにくいのかもしれません」(人材コンサルタント)

次のページ