「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」で英国首相ウィンストン・チャーチルを演じ、アカデミー賞の主演男優賞に輝いた英国俳優のゲイリー・オールドマン。ゲイリーの頼みでメーキャップを担当し、日本人で初めてアカデミー賞のメーキャップ部門を受賞した辻一弘さんとの意外な関係を明かしてくれた。
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──チャーチルは大役ですが、決心するまでに時間がかかりましたか?
「確かに。チャーチルはけた違いに偉大な人物であり、特にイギリス人の心の中では、特別な位置にあるから。加えて過去において多くの名優が彼を演じたから比較されるのは当然だったし。だから引き受ける前に、躊躇したのは事実だよ」
──結果的に演技はもちろんのこと肉体的にもチャーチルになりきっています。どうやって取り組みましたか?
「それは大きな課題だった。例えば『裏切りのサーカス』のジョージ・スマイリーのような役なら髪をグレーに染め、小道具の眼鏡をかければ、簡単になれた。ところがチャーチルの場合、誰もが知っている体形を再現するために、メイクもボディー・パーツも必要となったんだよ」
──日本人メーキャップ・アーティストの辻一弘さん(日本人で初めてアカデミー賞のメーキャップ&ヘアスタイリング部門を受賞)とタッグを組んだ経緯は?
「幸運にも、以前メイクを担当してくれた辻一弘さんを知っていて、僕の家の近所に住んでいるんだよ。彼は映画から引退して、彫刻をやっていたんだが、僕が説得してこの映画のメイクを担当してもらうことになったんだ。彼にとっても難しい仕事だった。彼は僕とチャーチルの体形を比べて、自分にできるかどうかわからない、と最初、不安を漏らしていたんだ。でも、成果は映画を見てもらえばわかるが、素晴らしい。この映画のもたらす魔法のような効果の一因なんだよ」
──映画のどこに惹きつけられましたか。
「この映画は彼の人生を網羅するのではなく、ほんの4週間ほどの出来事を追う内容で、イギリスがいかにナチス・ドイツに歩み寄るところまでいったのかという事実がひもとかれる。本当にあと一歩というところだったんだ。自分では知っていたつもりの歴史の一ページも歴史上の人物も、実はあまり知らなかったんだと気がつくいい機会だった。僕も非常に驚かされたんだ。その点で演じる価値のあるテーマだと思ったんだよ」