大センセイが現代おもちゃの戦略に苦言 (※写真はイメージ)
大センセイが現代おもちゃの戦略に苦言 (※写真はイメージ)

 SNSで「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれるノンフィクション作家・山田清機の『週刊朝日』連載、『大センセイの大魂嘆(だいこんたん)!』。今回のテーマは「別売り商売」。

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 昨年のクリスマスの朝、サンタ氏は昭和君に「DXギガントホウオー」をプレゼントしてくれた。小さい子供がいない読者には何のことやらわからないと思うが、戦隊もののTV、「宇宙戦隊キュウレンジャー」関連のオモチャである。

「秘密戦隊ゴレンジャー」を知っている世代ならピンと来ると思うが、キュウレンジャーには九人のヒーローが登場する。ゴレンジャー同様、九人それぞれのシンボルカラーが決まっており、南総里見八犬伝同様、それぞれがキュータマという球を持っている。

 さて、DXギガントホウオーだが、箱の中にはホウオウボイジャー(宇宙船)とホウオウステーションというものが入っており、このふたつを合体させるとギガントホウオーというロボットになるという。

 実際に合体させてみて、大センセイ、現代のオモチャが実に精巧に出来ていることに感心してしまったものだが、なぜか、用途のよくわからない部品が入っているのである。それは、ホウオウベースという長靴のような形をした部品だ。

 取扱説明書によれば、これは宇宙船ホウオウボイジャーの発射台だという。

「そんなもん、使わんわい」

 と思ったが、この長靴、ただの長靴ではなかった。この長靴をキュウレンオーというロボットと合体させて、さらにその合体君を先ほどのギガントホウオーと合体させると、キュータマジンという高次のロボットになると説明書は謳っているのである。

 キュータマジン、名前はキュータマジンのくせに、なんと十二個も球がくっつけられるというものすごいロボットらしい。ぜひ、作らねばなるまい。

 ところが、DXギガントホウオーのセットの中には、キュウレンオーというロボットが見当たらないんである。どうもおかしいと思って、よくよく説明書を読んでみると、キュウレンオーは「DXキュウレンオー」という別売りのセットの中に入っていると書いてある。

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山田清機

山田清機

山田清機(やまだ・せいき)/ノンフィクション作家。1963年生まれ。早稲田大学卒業。鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』(第13回新潮ドキュメント賞候補)、『東京湾岸畸人伝』。SNSでは「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれている

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