確かに、ケアの整った施設に入ると、病状の悪化が止まったりして予想以上に長生きできる人もいる。

 母(80)の介護をする40代女性は、自らの体験を思い出す。

「母は施設に入ってから、在宅介護のときより元気になりました。栄養士さんが計算した三度の食事をきちんと食べ、薬もきちんと飲んでいるからでしょうか。肌の色ツヤがよくなって健康的になったと感じます」

 長生きをリスクとしないためにも、貯蓄額と年金額をしっかりと確認しておきたい。年金額をみる際に気をつけたいのは、両親(夫婦)の合計額ではなく、1人分ずつ把握することだ。「ねんきん定期便」を見ると、受取額がわかる。

「夫が亡くなると、妻は遺族厚生年金を受け取れますが、夫と同額をもらえると勘違いする人が多いです。『父が有料老人ホームに入っていて、父の死後、母も同様に施設への入居を考えていたのに、年金受給額が思ったより少なく、入居できなかった』というお子さんの話をよく聞きます」(太田さん)

 資金面以外にも、看取りの態勢や食事の質、入浴時間、外出の自由度など、自分が譲れない条件はあらかじめチェックしておきたい。少なくとも3施設を見学し、体験入居もするなど、実際に足を運ぶことが重要だ。

「パンフレットやホームページではわからない点も多い。掃除は行き届いているか、職員さんの対応がよいかなど、実際に行って確認しましょう。一生に一度の高い買い物なので、ご家族と相談しながら決めることをお勧めします」

 失敗は許されない終のすみか選び。住み替えなどの苦労をしないよう、老後の資金計画をもう一度見直しておきたい。(村田くみ)

週刊朝日 2018年3月2日号より抜粋