効率的なトヨタのものづくりの代名詞が「かんばん方式」だ。この方式を編み出したのが元副社長の大野耐一で、「価値と価格を混同してはいけない。製品がその価格で売れるのは、顧客にとって価値があるからだ」と唱えた。当時から「顧客価値」を意識していたのには驚く。

 その大野を実行部隊長として支えたのが、生産調査室主査などを歴任した鈴村喜久男。鈴村の言葉は世間でほとんど知られていないが、本質を突くものが多い。

「大切なことは作ってなんぼの生産よりも、売れてなんぼのトータルの生産性だ」。今でも本当のプロはトヨタ生産方式について、見せかけの在庫減らしではなく、製造から販売までの一気通貫での効率化を意識している。それが大野や鈴村の“遺伝子”でもある。

 中興の祖の英二の後、トヨタをグローバル企業に成長させた点で功績があるのが現相談役の奥田碩だ。その名言は「トヨタの敵はトヨタ」と「何も変えないことが最も悪いこと」。強靭な経営体質で一時は自動車業界に敵なしと言われたが、慢心や驕りから内部崩壊しかねないことに常々警鐘を鳴らし、前例やタブーにとらわれない経営をめざした。

次のページ