鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍
子供が日々直面している危険(※写真はイメージ)子供が日々直面している危険(※写真はイメージ)
 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は子供が日々直面している危険について。

*  *  *

 ドラム式洗濯機の中に子供が入ってしまい亡くなった事故のニュースを知り。

 自分の子供は2歳半。家の中で隠れるのが好きになり、ソファの下とかにもこっそり隠れたりする。だからこそ、そんなニュースを見て、胸が締め付けられそうになる。子供が成長してきて、どんどんしゃべるようになる。可愛い。とてつもなく可愛いが、それと同時に怖くなる。「もし突然いなくなったら」と。人生、いつどこで何が起きるかわからないから。

 よゐこの有野さんが、以前、おもしろいことを言った。子供を2人育てている有野さんは、僕に「子供って、基本、死のうとする」と。高いところから飛び降りたり、危険なものを口に入れようとしたり。「それ、ダメでしょ」ってことばかりやっていく。

 危険なことを、まさに身をもって覚えていくのだろう。覚えてくれるのだったらいいけど、取り返しのつかないことになったら、たまらない。

 息子は、とても怖がりだが、最近、ようやく風呂で立てるようになった。それまでは湯船に入っても、ずっと僕の体に乗ったまま。「もう、足が下に着くよ」と言っても、怖がって浴槽に一人で立たない。が、1カ月ほど前、急に、湯船に一人で立ちだした。

 湯船の中に立つことが怖くないとわかると、怖さからおもしろさに変化する。映画「ゼロ・グラビティ」の主人公が宇宙から地球に戻ってきて大地を踏んで感動したように、それなみに興奮する。両足でお湯を蹴散らし、踏みしめる。

 そこまではいいのだが、今度は、浴槽を掴んで、ジャンプをする。その時に「もしこけたら」と想像する。どこかに頭をぶつけて大惨事に。だから注意する。

 ブログでこのことを書くと、お風呂で、皆さんのお子さんがほんのちょっとした隙に危険な目にあっている。ちょっと目を離した隙に転んだりおぼれたり。印象的だった言葉は、「お風呂の中だと子供は湯が10センチでも死ぬ」です。自分がシャワーを浴びている隙におぼれていたり。沈んだり。

 
 お風呂一つとっても、やはり幸せの中にも、緊張感が必要なんですね。たくさんの「もしも」を考える。息子を授かる前は、家の中での危険はキッチンまわりくらいしか考えていませんでしたが。子供の上着やパーカーの端っこが扉に引っかかって首が絞まったとか、そんな話を聞くと家の中には危険だらけなんですね。

 と、子供のことばかり言ってるが、僕もよく足の指をソファにぶつけるようになった。

 前より確実に。ネットで見ると、年を取ってぶつける人も多いらしい。あと、歩きながらのつまずき。30代の頃はつまずく人のことは笑っていたが、40代中盤になって、イメージより足が上がらないから、まあ、つまずくんですよ。「俺ってこんなに足、上がらなかったっけ?」と。これから家の中で想定外のケガをするかもしれない。自分だけじゃない。自分たちの親世代。介護をしている人たちにとっては、家の中でもたくさんの危険が潜んでいるだろう。危険に直面する前に、シミュレーションして生きよう。

週刊朝日 2018年2月16日号

著者プロフィールを見る
鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

鈴木おさむの記事一覧はこちら