北朝鮮の狙いは、抑止力を極限まで高めて米国との直接交渉のカードを引き出し、核保有国として認めさせることだろう。

 一方で経済制裁が、北朝鮮を確実に追い詰めている。はたして金正恩体制崩壊への導火線となるのか。12月22日には、国連安全保障理事会が北朝鮮に対し、10回目の制裁決議を採択した。ガソリンや軽油など石油精製品の輸出を9割削減するという厳しい措置が取られる。北朝鮮は「わが国の自主権への乱暴な侵害、朝鮮半島と地域の平和や安定を破壊する戦争行為」などと強く反発した。

 軍事的プレッシャーと相次ぐ経済制裁にも北朝鮮サイドは、表面的には強気の姿勢を崩さない。コリアレポート編集長の辺真一(ピョン・ジンイル)氏はこう見る。

「国際包囲網を張って兵糧攻めにしながら軍事プレッシャーをかけて、北朝鮮をギブアップさせようとしています。しかし、北朝鮮は過去9回の制裁決議にも反発してきましたし、米韓の軍事演習に怯んで弾道ミサイル開発を断念するかといえば、そんなことは到底考えられません。金正恩氏は相応の覚悟を持って、次の手を打ってくるはずです。北朝鮮は9月のミサイル発射以来、75日間も音無しの構えでした。国際社会は、米国の軍事力に委縮していたとか、あるいは対話を求めるために自制していたと見ていた。よもや、新型の『火星15』を開発していたとは思わなかったはずです」

 米韓合同軍事演習が終わった後も、金正恩氏は北朝鮮の“革命の聖地”である白頭山に登頂。平壌に戻った12月11~12日には、軍需工業部門の大会に出席した。「わが国を世界最強の核強国、軍事強国へとさらに前進させなければならない」と檄を飛ばし、今後も核開発を質量ともに強化していくことを宣言したのである。辺氏が続けて指摘する。

「対話の前提となるのは、北朝鮮の非核化です。はたして金正恩氏が応じるでしょうか。米国や日本は、北朝鮮が制裁や軍事プレッシャーに弱って対話を求めてくると思い込んでいる。北朝鮮側はトランプ大統領が譲歩しない限りは対話には応じない姿勢です。仮に、米朝間で交渉が始まったとしても、北朝鮮は弾道ミサイルや核開発の放棄を求められるから、決裂は必至です。結局、落としどころがないのです。私は奇跡が起きない限り、武力衝突が起きる可能性がきわめて高いと訴えてきた。金正恩氏が降参するか、トランプ氏が折れるか……。どちらもあり得ません」

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