「攻撃は段階的に行われますが、最初に出動するのは3機の電子戦機『EA‐18G』です。電波を発射して北朝鮮のレーダー網を完全に麻痺させ、さらに対レーダーミサイルで通信基地を破壊する攻撃機です。実際、訓練中にも北朝鮮のレーダー網を麻痺させてしまったようです。このため、北朝鮮は演習内容をまったく把握できなかったといいます」

 北朝鮮の通信網を無力化し、制空権を完全に奪ったところで、ステルス戦闘機のF35AやF22が出動。迎え撃つ北朝鮮の空軍を相手にすることもなく、ミサイル基地や生物兵器、大量破壊兵器関連施設など最優先のターゲットを次々と精密爆撃する。むろん、ソウルを照準にしたDMZ周辺の長距離砲陣地も完全に叩く。反撃能力を潰えさせた後、ステルス機能のないF-15、F-16戦闘機、B-1B爆撃機が残る主要軍事施設を思うがまま絨毯爆撃するという手順だ。

 開戦となれば、金正恩朝鮮労働党委員長は要塞化された地下作戦部に身を潜める。だが、通信衛星で金氏の動きは捕捉され、バンカーバスター(地中貫通爆弾)を搭載したF-35Aが“斬首作戦”を実行する。裵氏が続ける。

「さらに驚くのは、260機もの戦闘機の上空で早期警戒管制機『E-8ジョイント・スターズ』という航空機が展開することです。1度に600カ所の目標物をレーダーで探知し、優先順位を決めて、すべての戦闘機に攻撃の指揮、管制をする。おまえはこの基地を撃て、おまえはあそこを撃てというふうに、設定された軍事目標を一気呵成にしらみ潰しにしていくのです。その指示作業を確認する訓練も行われました。もはや、作戦は完璧に組み立てられています。もちろん、撃ち漏らしはあるでしょうが、開戦となれば、これまで考えられていたような反撃能力が北朝鮮に残っているとは思えないのです」

 仮に、北朝鮮が同時多発的な攻撃を企てたとしても、ほとんどのミサイルが液体燃料のため注入に1~2日かかる。その動向がキャッチされると戦争準備と認められ、米国にとってみれば先制攻撃の口実になる。だが、現実的には、米軍によるこの空前絶後の作戦も封印されることになる。

「いざとなれば、これほど大規模な攻撃を実行できるということを見せつけたのです。圧倒的な軍事力の差で北朝鮮を委縮させ、経済制裁に消極的な中国を圧迫する効果を狙っています。しかし、北朝鮮が先に奇襲攻撃を仕掛けてこない限りは、この作戦は実行されません。金正恩氏もそのことを十分承知しているから、制裁で追い詰められても体制維持のため、今年もレッドラインを超えないぎりぎりの“挑発”をくり返すでしょう」(裵氏)

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