「65.4歳の前期高齢者と後期高齢者では、医療・介護にかかる費用が天と地ほど違うのです。医療でいうと、前期の1人あたり医療費55.4万円(年)が後期には90.7万円まで一気に増える。しかも、そのうちの国庫負担は、前期7.8万円が後期35.6万円と約5倍に増えます。介護も同様で、こちらは国庫負担が前期1.5万円から後期には14.5万円と約10倍になってしまいます」ィ

 確かに、この構造がわかると、25年以降の財政は不透明度が一気に高まる。団塊の世代が一度に病気や要介護状態になるわけではないが、単純に国庫負担分を800万人分で計算すると、医療が約2兆8千億円、介護が約1兆1千億円、合計は約4兆円になる。このままでは、支えきれない可能性が高い。

 ところが、25年まで7年しかないのに、表面上は危機を示す兆候は表れていない。

 市場が落ち着いているのは、日銀の金融政策によるところが大きいようだ。

「異次元緩和が減速したといっても、今も年間60兆円超という猛烈な勢いで日銀が国債を買っているので、長期金利は0%近辺の低い水準に張り付いています。日銀の国債買いがなければ金利は上がっているはずで、問題が覆い隠されている格好です」(小黒教授)

(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2018年1月5-12日合併号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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