――それが論文につながった。

 はい。研究テーマは「寄付行動における意思決定」です。出没エリアと寄付で集まった金額をSNSで発信しながら活動すると、あっという間に1週間で10万円もの金額が集まりました。時間帯や天候、札や小銭の種類による構成比、地域差などのデータも細かく収集。そのデータとアンケートとを合わせて、修士論文を書きあげた。体を張った論文で、担当教授も「前代未聞」と大絶賛でした。

――集めたお金はどこへ?

 福島県いわき市、パラリンアート(障がい者自立推進機構)、ルーム・トゥ・リード・ジャパン(途上国の教育支援を行うNGO組織)に寄付しました。

――その後も続けるのはなぜか。

 僕、子供の頃からヒーローが大好きで、本気で会いたいと思っていた。だから、僕は子どもが会いに行けるヒーローになりたいんです。今の活動で、親御さんから「この子、あなたに会えるのが楽しみで、昨日の夜眠れなかったんです」と言われたりする。これってサラリーマン生活だと絶対にない経験で、めちゃくちゃうれしいですよ。前向きな気持ちが与えられたらいいと思います。

――そもそもなぜスパイダーマンを選んだ?

 完璧じゃないから。スパイダーマンは、ダサいいじめられっ子がヒーローになるという設定なんです。だからこそ、自分にも手が届きそうな気がして。

――共感できると?

 はい。例えば、女の子によく振られるとか(笑)実は最近も、彼女から振られたばかりで。それもスパイダーマンが原因なんです。平日は仕事、休日はスパイダーマン活動に充てるから、会える時間が取れない。しびれを切らした彼女から「私とスパイダーマン、どっちが大事なの?」と聞かれたんですが、この活動はやめたくなくて……。

――来年も活動を継続?

 “週末スパイダーマン”は、これからも続けます。マスクをつけると、自分でも面白いくらいスイッチが入る。着替えながら、めちゃくちゃワクワクしている。マスクを取れば、ただのサラリーマンだけど、スパイダーマンでいる時は、思いっきり人を喜ばせたい。人が楽しんでくれる限り、続けたいですね。

(本誌・松岡かすみ)

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