素材・部品メーカーがデータの改ざんを把握した場合、まず必要なのは、納入先の企業に正確な情報を提供し説明して、最終製品の品質・安全性に影響があるかどうかの確認を求めることだ。納入先を飛び越して改ざんを公表しても、最終製品の安全確認は納入先に任せるしかない。確認を行っている間に「改ざん」という言葉だけが独り歩きして、消費者に誤解を与えてしまう。

 自動車や電気製品などは、契約上の規格基準について、かなりの余裕をもっている。素材・部品のデータ改ざんがただちに安全性に影響するわけではない。安全性と無関係に改ざんの事実だけが公表されると、不安だけが広がるおかしなことになってしまう。

――消費者からするとデータの改ざんがあれば、すぐに発表してもらいたいと思います。

 データ改ざんは良くないことであり、是正しなければならない。しかし、それを把握した時に、急いで公表することが適切かどうかは別問題だ。問題は改ざんの有無ではなく、最終製品の品質・安全性にどれだけ影響があるかだ。「納入先に依頼してこれから確かめる」という説明しかできないのでは、かえって不信感を高めてしまう。

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多くの企業で同じような問題があると言われているが…