製品を作っていれば、必ず規格外ものは出てくる。その取り扱いによって、「データの書き換え」が行われる可能性がある。初期のころはわずかな書き換えで問題ないと思ってやっていたのが、世の中が改ざんに厳しくなったため隠蔽(ルビ/いんぺい)せざるを得なくなり、さらに巧妙、潜在化していくという構図がある。そういう行為は自社ではあり得ないと言い切れるメーカーの方が少ないはずだ。

――隠蔽されている改ざんを明らかにするのは大変ですね。

 だからこそ行政の責任は重大だ。東レの子会社の改ざん問題を受けて、世耕弘成経済産業相は「公表のタイミングがはっきり言って非常に遅い。日本の製造業の信頼を傷つけかねない」「顧客対応などとは別に、速やかに社会に対して公表をして、社会からの信頼回復に全力を注ぐことを期待したい」と発言した。

 しかし、顧客対応などとは別に公表することは、この問題をめぐる混乱を増幅しかねない。経産大臣にそのように言われれば、改ざんを把握したら、ただちに公表せざるを得ない。そうなると混乱を招くのは必至だ。企業としては実態を把握しないように、不徹底な調査にとどめてしまう。

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