この条文をよーく見てください。後半に「門地」ということばがありますよ。門地とはなに?です。このことば、いままで人生長くやってきて、聞いたことがありません。GHQはこんなことばを知っていたか、です。

 調べてみると、案の定、交渉の過程で日本側が巧妙に入れた訳語なのです。門地を辞書で引くと「家柄、とくに高い格の門閥」となっています。GHQ草案では、ここのところは「階級又は国籍起源」となっています。つまり、「階級や国籍によって差別されない」です。意味は明快ですね。条文の冒頭もGHQ草案では「すべての人は法の下に平等であって」という普遍的な真理をかかげていますよ。ここでも日本側は、明治憲法の精神・家父長制の精神で抵抗をします。「すべての人は」を「すべて国民は」に変え、「階級」を「社会的身分」、「国籍」を前の階級に沿うような訳語「門地」にしたというわけです。その結果、この法の下の平等は、日本国民だけに適用されるものになり、「国籍によって差別されない」が、「門地によって差別されない」に変わることによって、在留外国人には適用されないものになったのです。とくに在留外国人で最も多い人数の、敗戦まで日本人として、連合国軍に対して戦った在日朝鮮人・台湾人に適用されないことになったのです。文面上正しいが、実質的に差別する憲法となったのです。ほんとにびっくりです。

週刊朝日 2017年12月15日号より抜粋