酒井順子(さかい・じゅんこ)/1966 年、東京都生まれ。立教大学卒業後、広告会社勤務を経て、エッセイストに。2003年、『負け犬の遠吠え』がベストセラーに。『子の無い人生』や『男尊女子』など著書多数。近著に『忘れる女、忘れられる女』(講談社)(撮影/写真部・片山菜緒子)
酒井順子(さかい・じゅんこ)/1966 年、東京都生まれ。立教大学卒業後、広告会社勤務を経て、エッセイストに。2003年、『負け犬の遠吠え』がベストセラーに。『子の無い人生』や『男尊女子』など著書多数。近著に『忘れる女、忘れられる女』(講談社)(撮影/写真部・片山菜緒子)
三浦展(みうら・あつし)/1982年、パルコ入社。「アクロス」編集長、三菱総研を経て、99年、カルチャースタディーズ研究所設立。マーケティング・アナリスト。『下流社会』や『第四の消費』など著書多数(撮影/写真部・片山菜緒子)
三浦展(みうら・あつし)/1982年、パルコ入社。「アクロス」編集長、三菱総研を経て、99年、カルチャースタディーズ研究所設立。マーケティング・アナリスト。『下流社会』や『第四の消費』など著書多数(撮影/写真部・片山菜緒子)

 消費社会研究家として知られる三浦展さんが、急増するシングル世帯の消費動向を分析した『中高年シングルが日本を動かす』(朝日新書)を刊行した。中高年シングルの特徴とは何か。これからのカップル像とは? 現代女性を鋭く分析するエッセイストの酒井順子さんと話し合ってもらった。

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三浦:今、日本では一人で暮らすシングル世帯が急増しています。そのシングル世帯が何を消費しているのかを家計調査で調べて、男女別、世代別に特徴を分析し、このほど本にまとめました。

酒井:消費という側面から独身者を見る視点が、おもしろいですね。れんこんの消費が増えているというのが、すごく印象的でした。

三浦:でしょ。れんこんは、35~59歳の女性以外のすべての属性で増えているんですが、特に34歳以下の男性ヤングでの増え方がすごい。10年前に比べると、何と4.65倍も消費額が増えています。

酒井:れんこんは料理しないと食べられないものです。酢水につけたりと、料理もなかなか面倒くさい。それが増えているのですから、若い男性に料理好きが増えているということかしら。

三浦:そうです。収入が伸びないぶん自炊で頑張っているのだろうし、やり始めてはまっている人が増えているのかも。ユーチューブをのぞくと、若い男性がタイをさばいたり、だしを昆布とかつおぶしで一からとったりする動画がアップされています。そういうのを見ると、やってみたくなる人が多いようです。

酒井:若い女性の場合は、彼や夫が料理をつくってくれるというのが自慢になるんです。これが中高年女性だと、夫が料理する姿を見て「男のくせに……」と嫌な気持ちになる妻がいっぱいいる。このへんは世代差ですね。

三浦:シングル世帯の消費を調べるのがなぜおもしろいのかというと、最近の消費トレンドがくっきり調査結果に出てくるからです。4人家族などの「世帯消費」で見ちゃうと、息子は料理をするがお父さんはしない、お母さんは車を買うが娘は買わないので、数字が平準化してしまって、変化が見えてこないんですね。例えば、今の若い人は、ジャケットを着ないで、シャツの上にすぐコートを着ますよね。

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