電話で相手の顔も見えないのに、長々と話してはいけません。話せば話すほど情報が相手に伝わる。国会の政治家の答弁みたいに、淡々と「その件には全く関心ありません」などと答えて、電話をすぐ切る。ノーと言えない日本人にはなかなか難しいことですが。
――オレオレ詐欺など劇場型の手口が広まっています。
電話から入ってくるものは用心する。電話番号の表示機能をつけて、非通知は拒否した方がいい。自治体によっては、自動録音装置を貸し出しているところもあります。「おばあちゃん電話番号変わったよ」などと言ってきたら、前の番号にかけて確認する。普段から高齢者と孫ら親族がコミュニケーションを取っていれば、すぐにおかしいとわかる。
キャッシュカードを渡すように求められても、絶対に応じない。そんなシチュエーションはありえない。もし不審な人が来たら「今はわからない」と言って帰ってもらう。向こうは「今すぐやらないと」と言ってくるでしょうが、とにかく間をあけることです。疑問を感じたら消費者ホットラインに相談することもできます。「188(いやや!)」の番号にかけると、かけた場所から一番近い窓口につながります。
――詐欺で怖いのは、2度、3度と被害に遭うことですね。
だまされた側には、心の底で取り返したいという気持ちがある。うまい話に敏感に反応して、のりやすくなってしまう。だます側は何回でも狙ってきます。知らない人とは余計なことを話さず、すぐ断る。
――詐欺の危険性はPRされていますが、高齢者らの被害は後を絶ちません。
高齢者だけで防ぐのが難しければ、家族や地域全体で守る。例えば「高齢者の家に見慣れない若い男たちが来ているな」と思ったら声をかける。「偉大なるおせっかい」を推奨します。詐欺師に財産を奪われ、生活ができなくなった高齢者らはたくさんいます。生きる糧を失って、失意のまま亡くなる人もいる。詐欺師による「間接殺人」のようなもので、許してはいけません。みんなで被害を防いでいくしかないのです。
(構成/本誌・大塚淳史)
※週刊朝日オンライン限定記事