妻:息子になると、だんなの時とは全然気持ちが違う。心配というか、言葉では表せない。味わったことのない気持ち。

夫:あいつはずぶといというのか、泥臭さがある。要所要所でサボってるところもあって。打ち終わりに頭を振れと言われると、1ラウンドで振るのは振るけど、2ラウンドからはできへんねん。

妻:横着さが出るってことやろ? DNAやん。あんたもそうやった。相手のパンチが利かんかったら、よけずに受けてた。

夫:しょうがないな。辰吉のDNAはきついな。

妻:でも、寿以輝は、ボクシング界ではどこに行っても父ちゃんのことを言われるけど、帰ってきてそれをうれしそうに話している。「オレ自身を見て」という子もいるけど、そうじゃないみたい。むしろ、父ちゃんの大ファン。親としてはうざいなって思っているけど、ボクサーとしてはめっちゃ好きやねん。

――今は夫婦二人の生活。妻は夫の生きざまを尊重し、寄り添っている。

妻:私はずっと見てるだけ。おなか空いた、ご飯まだ?って言いながら。でも、最近はご飯を炊くようになったからね。この前はお風呂の掃除もしたし。生まれて初めてね。

夫:これマジやで。

週刊朝日 2017年10月27日号より抜粋