さて二条城をスタートして東へ15分も歩くと寺町通にぶつかります。東西の二条通と南北の寺町通が交差するこの一帯は、京都でも屈指のおしゃれ骨董ストリート。私はここの銀杏並木と舗道の閑静で落ち着いた雰囲気が大好きです。

 有名なお茶の「一保堂茶舗」、お菓子の「村上開新堂」の老舗目当てに内外からの旅行者が訪れますが、ミシン屋「石田ミシン店」、ボタン屋「エクラン」、洋裁材料屋「ヨシミ」、手芸用品屋「ハンズよしみ」、古布屋「アドーン」「ギャラリー啓」といったレトロなお店が軒を連ねているのは、知る人ぞ知る、です。

 さらに進んで改修が済んだ二条大橋で鴨川を渡ると、これまた知る人ぞ知るお寺が立ち並ぶ通りとなります。有名じゃないからと、侮ってはいけません。頂妙寺(運慶・快慶作とされる仁王尊、俵屋宗達の絵)、本妙寺(赤穂浪士の寺)、信行寺(伊藤若冲の天井画)など、古いお寺にはそれなりの曰く因縁や国宝級の仏像や絵が所蔵されていることが多いのです。思わぬところで、思わぬものに巡り合うのが通り歩きの楽しさです。

 更に東に広がる京都国立近代美術館4階から眺める平安神宮の巨大な赤い鳥居は、アートなオブジェとして一見の価値ありです。その他明治以降に建てられた京都市美術館(現在閉鎖中)や琵琶湖疏水、動物園など、定番見どころもつきませんが、南禅寺に近いところで道は途切れます。

■一見さんから小店の常連さんへ“外す”
 京都巡りを楽しむコツは、流行、行列を手がかりに未知の店を転々とする一見(いちげん)さんを卒業し、なじみの小店の常連さんへ“外す”ことです。

 何度か足を運ぶうちに、一定の距離は保ちつつも、お互いになんとなく見知っているという安心感が醸成され、これがつきあいの基本となり、ちょっとしたおまけやお得情報へと、つながっていくのです。

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