私は二条通の散歩の途中で、創業100余年の折箱屋「谷為」を見つけ、ハイキング用にとりあえず、数個買いました。今となっては、珍しい木製の折箱は、店主の手によってひとつひとつ丁寧に作られています。ごはんやおかずの湿気を適度に吸ってくれる折箱で食べる弁当は、いつもよりおいしいと感じ、2度目に行った際に、そのことを告げたところ、店主は折箱に使用する材料やサイズの違いを説明してくれた後に、私に一番ふさわしい折箱はこれ、と勧めてくれました。3度目には、まとめて1ダースほど買ったのですが、100年前からずっと使っている地下の珍しい作業所をのぞかせてくれました。爾来、年に2、3回は出向くようになりました。

 二条木屋町に、毎シーズン伺う、メンズ・カジュアルウェアのお店「UNIT」があります。ここには、自転車に乗る、ということを想定したワードローブが、靴から服、バッグ、帽子までトータルでそろっています。自転車の町、京都ならではのコンセプトです。

 店主曰く、「どんなにデザインセンスがない人でも、うちの服なら着こなせます」とのこと。しかも、すべて洗濯機で洗え、アイロン不要、手間いらず。

 訪れる自転車愛好家は、小1時間は歓談していきます。ただ服を売るのではなく、自転車愛好者のためのサロンとして、人と人とのつながりをつくっていく、新しいコミュニティービジネスを目指しているように思われます。

 京都に行ったら必ず立ち寄るなじみの店をいくつか持つことをお勧めします。

週刊朝日 2017年10月27日号