松本潤、女性がイラつく男を熱演?(※写真はイメージ)
松本潤、女性がイラつく男を熱演?(※写真はイメージ)

 10月7日から全国公開される映画『ナラタージュ』。主演の松本潤が挑戦したのは、有村架純が演じるヒロイン、工藤泉が恋い焦がれる教師・葉山貴司役。監督を務めた行定勲が、そのキャスティング理由を明かした。

*  *  *

行定:前にプライベートで会ったのは飲みの席だったんだけど、そこで相当な核心まで話すというか。「なんで俺たちは一緒に仕事してないんですか」みたいな(笑)。それがすごく印象がいいんですよ。実は最初、プロデューサーから松本君の名前が挙がったときには、俺はちょっと違うんじゃないかと思ったの。「松本君は実直だからな」と。でも脚本家(堀泉杏さん)は乗ってたし、「女性に響くということは、何かがあるんだ」と思ったんです。それでよくよく考えてみると、松本君は実直であると同時に非常にクリエーティブで、客観性を持っている。真っすぐでガツンとくる芝居がはまり役になりやすいけど、そうじゃない役をやったときにどんな変化が起きるのか。それを見たいと思ったし、できる人だと思った。

松本:これまでやってきたラブストーリーとは違いましたし、葉山のような役はやったことがなかった。難しかったけれど、それ以上に楽しかったです。

行定:僕の中で一番のキラーショットは、雨の日に酔っぱらった葉山先生が、車の中で泉が迎えに来るのを待っているところ。眼鏡をはずして、雨のしずくのかかるガラス越しにぼんやりと見える、あのたたずまい、表情、存在感。あれが撮れたときに、この作品はいけると思いました。

松本:わりと序盤に撮ったんですよね。打ちのめされた葉山が、迎えに来てくれた泉をさらに打ちのめす、非常に重いシーンでしたが、僕も好きな場面です。「このテイストなんだ」と掴めました。行定監督は空気や匂いみたいなものを大事にされていて、それをしっかり画(え)に映しだす。そこがすごく素敵だと思いましたね。

──監督は別のインタビューで「この作品の撮影はキツかった」と語っていましたが、大変でしたか?

行定:キツかったのは泉の場面です。演技って口で教えられるものじゃないから、有村さんを一人その場において、泉の感情と向き合ってもらわなくちゃならない。有村さんはキツかったと思いますよ。だから松本君とは、「我々はどのくらい彼女の表情をひき出せるかどうかだね」と話していました。反対に、僕は葉山の気持ちがよくわかるから、松本君の場面は楽しかったですね。葉山は何度も「ごめん」と口にするけど、何も変わらない男だから。彼の優しさでもあるのですが、女性は腹が立つでしょう。

次のページ