津田大介「国外に逃げ場を求めるフェイクニュース」
連載「ウェブの見方 紙の味方」
ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。ドイツ極右勢力の躍進をソーシャルメディアの観点から分析する。
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9月24日、ドイツ連邦議会選挙の投開票が行われた。メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟が246議席、中道左派の社会民主党が153議席を獲得。それぞれ第1党、第2党の座を守ったものの、選挙前より大きく議席を減らした。
一方で、躍進を果たしたのは難民の受け入れ反対を主張する新興右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」だ。
AfDは2013年に反EUを掲げて結党したばかりで、メルケル政権の開放的な難民受け入れ政策への反発を背景に支持を拡大。今回の選挙では初めての国政進出ながら94議席を獲得し、第3党の位置につけた。AfDが連立政権に加わる可能性は低いが、議会内で大きな発言力を得たことで、今後の議会運営や政策決定に影響を及ぼす存在になりそうだ。
昨年6月の英国のEU離脱決定、11月の米国大統領選挙に続いて今年5月のフランス大統領選挙でも、排外主義的な政策を掲げる集団の躍進が注目を集めた。彼らを勢いづけ、世論形成に少なくない影響を与えたのが、ソーシャルメディア上に蔓延(まんえん)したフェイクニュースやヘイトスピーチと言われている。いずれの選挙においてもロシアによる介入が疑われ、ソーシャルメディアの運営事業者や各国政府は対策に追われている。
中でもドイツはソーシャルメディアに流れるフェイクニュースやヘイトスピーチを「サイバー攻撃」と捉え、もっとも強硬な対応を取った国だ。今年6月には通称「フェイスブック法」と呼ばれるソーシャルメディア規制法を成立させ、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディア事業者に、ヘイトスピーチなどの違法な投稿を24時間以内に削除することを義務づけた。