鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍
新しい出発を発表した香取君ら新しい出発を発表した香取君ら
 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「香取慎吾」をテーマに送る。

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 テレビ朝日「SmaSTATION!!」という番組が16年の歴史に幕を閉じました。始まったのは2001年10月。この年の9月11日にアメリカで同時多発テロが起こり、スマステは当初イメージしていたものよりニュース色の強い番組としてスタートした。そこから英語のコーナーや様々な企画を経て、行列グルメや最新文房具などの生活情報を他とは違った切り口で見せていく番組になった。一般の視聴者はなかなか気づきにくいと思うが、あの番組は非常に珍しいスタイルだ。

 情報としては、夕方のニュースなどでもやっていそうなテーマなのだが、それをスタッフの取材と、洒落た編集で仕上げていく。ラーメンを食べている映像にもBGMで格好いい洋楽がかかっていたりする。

 そしてVTRの仕上げをわざと隙があるように作る。というのも、生放送で香取慎吾君とゲストがリアクションをして、そこも含めて完成するからだ。

 一緒に仕事をするとよくわかるのだが、香取慎吾君の生放送の進行、時間読み、ゲストのフォローはかなり完璧である。まさにこれこそ、「ホスト役」だと思う。いろんな番組がある中、スマステを指名して出てくれるゲストがたくさんいた。その理由は、土曜日の夜に生放送であることが大きい。映画のプロモーションなどで、朝から舞台挨拶をして、締めにスマステに出るという形を選んでくれる人も多かった。そしてやはり香取慎吾君が司会をしているのが大きい。ある映画会社の人に聞いたことがある。なぜスマステには俳優さんや女優さんが出たがるのか?と。その人はこう答えた。

「香取慎吾さんは生放送でも絶対に聞かれたくないことを聞かない」

 芸能人が今まで世に発表していなかったことを発言してもらうというのはテレビショーの基本である。だけど、スマステはそこを求めることはなく、あくまでも今の世の中を切り取った情報を見せて、ビッグゲストにワイプの中でリアクションしてもらう番組だった。このような形の番組がなくなることは、放送作家としても寂しい限りである。今からああいう番組を立ち上げようと思ってもなかなかできないからだ。

 番組は毎回、テレビ朝日の屋上から見える東京タワーをバックに始まっていた。番組の最終回では、なんと東京タワーさんのご厚意で、東京タワーがスマステの番組カラーに染まっていた。無料で東京タワーさんの気持ちでやってくれたのだ。

 日本で一番高い建物だった東京タワーは、今は日本一ではない。が、しかし、あの日、ブルーをメインに輝き、香取慎吾君の心を照らした東京タワーは、ナンバー1でなくなっても、オンリー1の存在なんだと、たくさんの人の心に刻まれたと思う。

 そしてあの青い東京タワーが、香取慎吾君たちがこれから描く「新しい地図」の真っ白な地図の中のスタート地点になったのではないかと思う。

 40代で新しいスタートを切ることはとても勇気のいることである。だけど、その勇気から始まる新しい旅が、たくさんの大人たちの背中も押してくれるに違いない。

週刊朝日 2017年10月13日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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