「今はネット社会で、情報が溢れかえっていますよね。著名人は、生い立ちから今現在までばっちり情報が出てくるでしょう。そうすると、けっこう複雑な家庭環境で育ったことや、デビューしてから大ブレークするまで時間がかかったことなどいろいろな情報が出てきて、そこがまた女性の母性本能をくすぐることも多いのです。ムロツヨシさんしかり、高橋一生さんしかりですね」

 なるほどムロツヨシも、今をときめく高橋一生も壮絶な生い立ちであることは有名だ。ムロツヨシは大学を中退し、下積み時代を経て、メジャー映画、テレビドラマへの出演のチャンスをつかんできたという経歴の持ち主。高橋一生も子役デビューし、小学生のころから芸能界でがんばってきた実力派俳優だ。

「2人に共通して言えることは、“苦労人”だということです。デビューしてからずっとスター街道を歩いてきたわけではない。きっといろいろなことを乗り越えてきたんだろうな……と思わせてくれるところに、人は心が動かされるのです」(山田さん)

 そう考えると、これまた今をときめく星野源も2012年、31歳のときにくも膜下出血と診断され、活動を休止。病気の治療を経て復帰後の大ブレークだ。

「ポッと勢いで世の中に出てきたわけではなく、苦労、努力、実力でのぼってきた人が花を咲かせる。その火付け役になったのが星野源さん、高橋一生さん。そこに続く形になったのがムロツヨシさんだと思いますよ」(同)

 前出の片田さんは、チョロッとイケメンの人気は、傷つきたくない、というイマドキの若者らの深層心理を反映しているとも指摘する。

「今の時代、“恋愛で傷つきたくない”というのは、男性も女性も一緒なんです。少子化で、親が子どもを大事にするでしょう? 親は子どもが挫折しないように、目の前の石をどけておく。学校の先生もモンスターペアレント(子どもかわいさゆえに、学校等に対して理不尽な苦情や要求を突き付けてくる親)はこわい。なので、先生たちも子どもには無難に指導するわけです。そうやって育てられた世代は、リスクを避けて生身の人間とは恋愛しない。ゲームやネットの世界の疑似恋愛なら傷つかないからいいけれど、現実世界で人と恋愛関係になるのはNGなのです。そんな“恋愛不可能”な人たちは今非常に増えているんですよ」

 こうしてイマドキの女子は、どこまでもリスク管理が行き届いてしまうのであろう。厚生労働省のデータによると、日本の婚姻率は09年から下がり続けている。源様、一生様、ツヨシ様の人気が続く限り、もしかしたらこの婚姻率の低下に歯止めはかからないカモね♪なのである。(ライター・赤根千鶴子)

週刊朝日  2017年9月22日号