W杯出場影の功労者である手倉森誠コーチ(写真左)と浅野琢磨(同右)=撮影は2016年6月29日 (c)朝日新聞社
W杯出場影の功労者である手倉森誠コーチ(写真左)と浅野琢磨(同右)=撮影は2016年6月29日 (c)朝日新聞社

 1試合を残してワールドカップ出場が決まった日本代表。

 劇的勝利から一夜明けた9月1日の会見で、ダビド・ハリルホジッチ監督は高らかに続投を宣言したが、その裏には、手倉森誠コーチという“軍師”がいた。手倉森コーチはベガルタ仙台監督などを歴任、2016年のリオ・オリンピックで代表監督として指揮した人物だ。

 大一番だった8月31日のオーストラリア戦で、ハリルホジッチ監督はスタメンに代表経験の少ない22歳の浅野琢磨、21歳の井手口陽介を抜擢する大胆な采配をふるった。

 その起用はズバリ的中し、浅野は先制点を、井手口は追加点を決めた。

 サッカー関係者はこう指摘する。

「テグさん(手倉森コーチの愛称)がいたから選手たちが一つにまとまり、ハリルホジッチ監督も浅野や井手口などリオ五輪世代を抜擢できたのです」
 
 最終予選で日本代表は苦戦が続き、ハリルホジッチ監督はその手腕が疑問視されるなど窮地に立たされていた。

 第1戦、日本のホームでのUAE戦でまさかの黒星を喫し、さらにメディアからの批判が厳しくなった。日本代表は予選グループ首位にもかかわらず、オーストラリア戦直前には一部スポーツ紙から「引き分け以下で解任へ」という報道が連日飛び交い、「解任」の空気が漂い始めていた。
 
 二次予選から最終予選序盤戦まで、ハリルホジッチ監督は代表主力である本田圭佑、香川真司、岡崎慎司らの先発起用にこだわり続けた。しかし、3人は当時、所属チームでなかなか試合に出られてなかったせいか、代表戦のプレーもさえなかった。

 それでもハリルジッチ監督は3人の先発起用にこだわり続けたが、その采配に日本サッカー協会だけでなく選手たちからも疑問視する声が出ていたという。

 チームが分裂仕掛けていた中、手倉森コーチが元オリンピック代表監督の経験を買われ、16年10月から、代表コーチとなった。

「最終予選で厳しい船出になったA代表にいい風を吹き込みたい」と加入時に意気込みを語っていた手倉森コーチは、積極的に選手たちや監督とコミュニケーションを取った。

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