「病原菌などを扱う場合や、廃棄物を処理する場合は感染症法に従って実施されなければなりません。それが、設計図を見る限りでは、実験後の汚水や廃棄物をどのように処理をするのか読み取れません。実験内感染の対策として非常用のシャワーが設置されていますが、それもBSL施設の外にある。シャワー室にたどり着くまでに病原菌が拡散する危険性もあります。とても専門家が設計したとは思えません」

 BSL3の安全性について加計学園は、「法令に従って建設しているところであり、まったく問題はありません」とコメントしている。だが、現時点で不安は解消されていない。

 疑問点は安全面だけではない。設計図によると、BSL3の研究室の広さはわずか15.41平方メートルで、9畳半程度しかない。実験機材を設置すると、実際の研究スペースはさらに狭くなる。前出の新井氏は言う。

「BSL3の実験室に入れる人数は、この広さだと2~3人でしょう。また、最先端の新薬開発には医療用のアイソトープ(放射性同位体)を使うことが求められますが、アイソトープの研究施設は法令で厳しく制限されています。加計学園の獣医学部棟がそれに適応できるよう設計されているとは思えません。最先端の仕事がしたい研究者で、こんな小さな施設を利用する人はいないと思います」

 安倍首相は、加計学園の獣医学部新設で「新薬の開発などの先端ライフサイエンス研究の推進」をするとぶち上げていたが、それも“ウソ”だったのだ。

 25日、獣医学部新設について審査していた文部科学省の審議会は、実習計画などが不十分だとして来年4月からの開設について保留することを決めた。10月末に再度、結論を出す予定だという。ここで不認可となれば、安倍政権に与えるダメージは計り知れない。官邸内からは「加計学園に自主的に認可申請を取り下げてもらうしかない」との本音も漏れる。

 政権を揺るがすスキャンダルとなった加計学園問題に、安倍首相の解散戦略も揺らいでいる。安倍首相の周辺議員は言う。

「本来であれば今年中に解散したいところだが、この状態で総選挙をする体力は、今の内閣にはない。一方で、年内に解散できなければ自民、公明ともに与党内から内閣総辞職を求める声が高まるでしょう」

(今西憲之/本誌・西岡千史、村上新太郎)

週刊朝日  2017年9月8日号