高齢者向け求人の実例(週刊朝日 2017年8月18-25日合併号より)
高齢者向け求人の実例(週刊朝日 2017年8月18-25日合併号より)

 高齢者は自宅でノンビリ過ごすもの。こんなイメージがなくなって久しい。65歳以上の5人に1人が働いていて、その割合はドイツの4倍近く。仕事の内容も、小売りから製造業、福祉関連まで幅広い。「死ぬまで現役」社会はすぐそこまできている。あなたも仕事探し、始めませんか。

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「いらっしゃいませ。店内でお召し上がりですか」

 入ると元気な声で迎えてくれるファストフード店。店頭では女子高生らに交じって、65歳以上の女性が活躍している。大阪市の女性(66)は、4年前から大手チェーンのパートタイマーだ。妹が働いていたこともあり、関心を持った。履歴書を店舗に持っていき、常識を問うペーパーテストや面接を経て採用された。

「高校生や外国人のスタッフもいるが、高齢者も多い。70歳が1人、69歳が2人、68歳が1人と、私より年上の人も頑張っている。体力的にきつい人は、1日4時間勤務でもいい。少しでも稼ごうと、他の仕事と掛け持ちをしている人もいる。私は親の介護で1カ月休んだこともあった。自分の都合に合わせて働くことができる」

 ファストフード店では調理や片付けなど、さまざまな役割がある。若い人に交じって働くためには、コミュニケーション能力も求められる。

「業務が忙しいときは同僚と協力しないと、店がまわらない。スタッフ間の雰囲気が悪くならないよう、年齢に関係なく話しかけるようにしている」

 ファストフードに限らず飲食業界は、人手不足が深刻だ。女性だけでなく男性も採用しており、働くチャンスは高まっている。

 スーパーやコンビニエンスストアといった小売店も、積極的に採用している。

 スーパー「ライフ」を展開するライフコーポレーションは、2年前から高齢者の採用に力を入れていて、60歳以上の未経験者も採っている。特に人手が足りない鮮魚や総菜部門などで期待されている。担当者によると、

「スタッフを募集しても、若い人がなかなか入ってこない。シニア世代はパート全体の2割を占めるようになった」

 スーパー「マルエツ」は3年前に、直接雇用しているパートの定年を、70歳まで引き上げた。現在60代のパートの割合は、8%弱まで高まってきている。他の大手スーパーでも、高齢者の採用は進む。

 セブン-イレブンやローソンなどコンビニ業界でも、人手が足らないのは同じだ。シニア向けの説明会も開いて、人材を確保しようとしている。

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