そもそも入浴には、さまざまな健康効果があることが明らかになっている。その一つが、日本温泉気候物理医学会温泉療法医会で発表された研究だ。温泉療法医が診ている患者を5年にわたって追跡調査すると、「週に7回以上、入浴していた人」は、要介護や要支援状態になりにくく、自立度が高いことがわかった。

 では、入浴にはどんな作用があるのだろうか。

 一般的にいわれる入浴の作用には、体を温め血行をよくする温熱作用、水圧による作用、地上の10分の1ほどになるという浮力作用が知られる。早坂さんはこのなかの“温熱作用”に注目する。

「私たちの体には37兆個の細胞があると言われています。そうした細胞に酸素や栄養を運ぶ血液の循環がよくなれば、それだけ細胞は活性化します。また、細胞から排出される老廃物も速やかに回収されるので、デトックス効果が高まります」(早坂さん)

 細胞が活性化するため基礎代謝が上がったり、免疫力がアップして感染症にかかりにくくなったり、胃腸で消化や吸収が促進されたりする。免疫細胞が入浴後に活性化することは、研究でも明らかになっている。

 鏡森さんは、水圧で負荷をかけることで心機能を高める心臓トレーニング効果(肩までつかった場合)や、自律神経のバランスを調整する効果などを挙げる。
「実際、わが国では“和温療法”という入浴を利用した治療が、主に慢性心不全の患者さんに対して行われています」(鏡森さん)

 さらに、お風呂に毎日入る人は、入らない人より幸福度が高い──。そんな調査結果も出ている。研究を行ったのは早坂さんらで、静岡県内の住民約6千人を対象に実施。この調査では、シャワーだけですませる人よりも、お風呂に入る人のほうが、幸福度が高いこともわかった。早坂さんは、「お風呂に入ると気持ちがいい。その感覚が数字に表れたのだと思います」と推測する。

 世界中で唯一、湯につかる習慣があるという日本人。その効果を十分に生かして厳しい夏を乗り切ろう。

週刊朝日 2017年7月28日号