入浴環境をさらに快適にしたいのであれば、夏向けの入浴剤を。石川さんのおススメは、「炭酸水素ナトリウム」が含まれているタイプだ。パッケージに成分が書いてあるので、購入時にチェックしよう。

「炭酸水素ナトリウムは、入浴効果を高め、皮脂汚れをとってさっぱりさせてくれます。爽快感がほしいときは、メンソール入りのものを選ぶといいでしょう」(石川さん)

 ちなみに、入浴剤には医薬部外品と浴用化粧品のほか、雑貨の分類に入るものがある。効果を期待したいのであれば、前者の二つから買い求めたい。これもパッケージに書かれているので、確認したいところだ。

「市販の入浴剤の色や香りが気になる人は、自分で作ってもいいでしょう」

 と早坂さんは提案する。作り方は簡単。食用として売られている重曹を大さじ2杯、湯船に入れるだけだ。さらに、入浴直前に食用のクエン酸を大さじ1杯入れれば、炭酸湯になる。記者も手作り入浴剤を試してみた。炭酸湯は無臭で入浴剤を入れた感じはなかったが、入った後はしばらくさっぱり感が続いた。

 以上のように、夏こそ入浴。だが、注意も必要だ。

「冬は脱衣所と湯の温度差によるヒートショックが問題になりますが、夏は脱水や熱中症に気をつける必要があります。特に高齢者は注意を」(早坂さん)

 ある実験では、1回の入浴で体から奪われる水分量は、800cc。つまり、500cc入りのペットボトル1本半ぐらいになるという結果が出ている。血液がドロドロになりやすいので、入浴前と後には、コップ1、2杯の水を飲むことを忘れずに。もちろん、飲酒後の入浴は控えること。

 入浴による健康効果を研究する富山産業保健総合支援センター所長の鏡森定信さんは、入浴後30分ぐらいまでは、体温は下がっても脳の温度が高く、入浴時より血流がよくなっている状態が続くことを、実験で確かめている。そのため、入浴中と同様、急に立ち上がると脳虚血になって立ちくらみが起こる危険があるので、気をつけたい。

 だがその一方で、入浴後のこの時間帯こそ脳の“ゴールデンタイム”になっている可能性もあると、鏡森さんは推測する。

「血流がよくなることで、脳細胞に酸素やブドウ糖が供給され、脳のゴミが除去される。脳の修復タイムになっているようなのです」(鏡森さん)

次のページ