同居期間別離婚件数の年次推移(週刊朝日 2017年7月7日号より)
同居期間別離婚件数の年次推移(週刊朝日 2017年7月7日号より)

 熟年離婚する夫婦が増えている。その多くは女性から切り出すパターン。しかし、現実にはさまざまな障害もある。編集者でライターの赤根千鶴子氏が離婚のための手段を専門家に聞いた。

 熟年離婚をスムーズに進めるには、まずは別居することだ。

「別居は『あなたとはもう夫婦として一緒にやっていかれない』という意思表示。そのうえで離婚に向けた話し合いを進めていくべきです」(弁護士の比留田薫さん)

 離婚をしたいときに一番やってはいけないのは、突然夫に離婚を切り出すこと。

「年齢を重ね、ある程度の社会的地位を築いてきた男性はプライドが傷ついて、逆に頑なになってしまうことが多いんです」(夫婦問題研究家でライフアップ・カウンセラーの岡野あつこさん)

 千葉県に住む三木陽子さん(仮名・61歳)は、このパターンで大失敗をしたとため息をつく。商社マンだった夫は、小学4年生まで海外で育った帰国子女。陽子さん曰く、“家事も育児も一切できない甘えんぼちゃん”。自分の母親のことをいまだに“マミィ”と呼ぶことがある。夫の定年後、ある程度脇をかためてから、離婚の希望を夫に伝えたのだが、それが悲劇を招いた。

「夫は想像もしていなかったのでしょうね。急に真っ赤になって怒りだし、近くに住んでいる84歳の“マミィ”に電話をして家に呼び出し、2人して私を罵倒し始めたんです。『おまえごときが、何が離婚だ!』『おまえごときに捨てられてたまるか!』と、どれだけ汚い言葉で罵られたことか」

 頭に血が上った夫とはその後も結局離婚の話し合いが一切進まず、陽子さんは憂鬱な日々を過ごしている。

 前出の岡野さんは言う。

「面と向かって離婚を告げられて、『はい、そうですか』と同意してくれる熟年夫はまず存在しないと思ってください。離婚と聞いた瞬間に頭の中が『この俺にたてをつくのか? この俺を裏切るんだな? よし、おまえに目にものを見せてやるからな』になってしまうんですよ。離婚は冷静なやりとりのもとに進めなければ、必ず損をします。夫が頑なになればなるほど、自分の元に入ってくる財産は少なくなるということを認識してください」

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