こうした経緯から13年8月、文化審議会は産業遺産ではなく、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を世界遺産の推薦候補に決定。一方、康子氏や和泉首相補佐官率いるチームは、内閣官房に別個、有識者会議を設け、産業遺産を推薦候補とし、両者は真っ向から対立した。

 同年9月、菅官房長官の裁定で産業遺産が政府推薦候補に選ばれ、15年7月には世界遺産登録。康子氏、和泉首相補佐官らの大勝利となった。

 昨春の和泉首相補佐官による「西村氏外し」は、かつて文化審議会が盾ついたことに対する、“報復人事”ともみえる。当の西村氏を直撃すると困惑しながら、こう証言した。

「まあ、あったかもしれませんね、知りませんけど。私は文化庁の人に『任期が来たから辞めてもらう』と言われ、『そうですか』と言っただけで、それ以上は何も知りません。長崎の教会群を推したのは、そちらの計画のほうがよくできていたから。昔のことだし、あまり答えたくない。これ以上、いろんなことに巻き込まれたくないので……」

 和泉首相補佐官に取材を申し込んだところ、「ご指摘の点については、記録が残っておらず、確認できません」とのこと。

 加藤康子氏にも取材を申し込んだが、「すでに色々なメディアで当時のことは話しており、それ以上お話することはありません」。

(本誌・小泉耕平、亀井洋志)

週刊朝日 6月23日号より抜粋、加筆